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導電性樹脂とは?樹脂別導電グレード一覧や種類・選び方

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導電性樹脂とは?樹脂別導電グレード一覧や種類・選び方

本記事では、導電性樹脂の基礎について包括的に解説します。軽量で自由な成形性を持ちながら必要十分な導電性を発揮できる導電性樹脂は、今後ますます材質選びの重要な選択肢の一つになるでしょう。

設計者にとっては、金属材料と絶縁性樹脂の中間に位置する新たなソリューションとして、性能・コスト・環境面のバランスを見極めつつ活用していくことが求められます。製品要件にマッチした導電性樹脂を賢く選び取ることで、軽量化・一体化・生産性向上・環境配慮といった多くのメリットを享受できる可能性が広がっています。

導電性樹脂とは

導電性樹脂とは?

導電性樹脂とは、電気を通す性質を持つプラスチック材質の総称です。通常の樹脂(プラスチック)は電気を通さない絶縁体ですが、特別な工夫により電気伝導性を付与することで導電性プラスチック(導電性ポリマーと呼ばれることもあります)が実現します。一般的に、導電性樹脂には大きく分けて2種類のアプローチがあります。

一つは「導電性高分子(導電性ポリマー)」と呼ばれる素材自体が分子構造上、電子を移動させる機能を持つ高分子材料です。もう一つは、「導電フィラー(充填材)」と呼ばれる電気を通す粒子や繊維を、通常の樹脂に混ぜ込んで複合化したものです。

前者の例としては、ポリアセチレンやポリアニリンなどが挙げられ、1970年代に白川英樹博士らがポリアセチレンのドーピングによる高導電化を発見し、2000年にはノーベル化学賞を受賞しています。

後者の例としては、炭素粒子をポリエチレン樹脂に混ぜた「導電性PE」など、市販の各種導電樹脂製品の多くはこちらに該当します。

導電性樹脂が電気を通す仕組みは、導電成分が樹脂中でネットワーク状に繋がることで電流の通り道ができることにあります。特にフィラーを混ぜ込む場合、ある一定以上の濃度になると急激に導電路が形成され抵抗が下がる現象(パーコレーション現象)が知られています。

このため、フィラーの種類と含有率を調整することで、半導体的な帯電防止レベルから高い導電レベルまで幅広い抵抗率の材料を作り分けることができます。導電性樹脂は金属ほどの高い導電性には及ばないものの、軽量で柔軟なプラスチックに電気を通す機能を付与できる点が大きなメリットです。

その結果、電子機器から自動車まで、さまざまな分野で金属材料を置き換える新素材として注目されています。

まとめ

導電性樹脂は樹脂自体を導電化する方法や導電フィラーを混合する方法により、電気を通す機能を付与したプラスチック材質です。軽量性や成形自由度を保ちながら、用途に応じた導電性を設計できる点が特徴です。

導電性樹脂グレード

さまざまな分野で活用される導電性樹脂グレード一覧表

この章では、各種樹脂母材(ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、PPS、PC、PEEKなど)における導電グレード製品の一覧表にまとめました。

それぞれの導電グレードの概要(導電フィラーの種類、特徴、代表的用途など)についても解説しています

導電性樹脂グレード一覧
樹脂母材 導電グレードの有無 主な導電フィラー 代表的な特性(抵抗値レンジ・特徴など) 主な用途例 主な提供メーカー・製品例
ポリプロピレン(PP) あり
  • カーボンブラック
  • カーボンファイバー
  • CNTなど
  • 体積抵抗率が10^0~10^2 Ω・m程度と非常に低く、安定した導電性
  • 摩耗によるフィラー脱落が少なく耐摩耗性良好
  • 軽量で成形性も良い
  • 静電気対策用の搬送器具・治具・作業台・カバーなど電子部品の安全取扱いに使用
  • 自動車の燃料系部品やEV部品の静電対策にも利用
  • JSP(ARPRO®)
  • Premix社(PRE-ELEC® PP)など
ポリエチレン(PE) あり
  • カーボンブラック
  • ※一部カーボンファイバー
  • 主にカーボンブラック高配合で導電化
  • 表面抵抗値10^4 Ω以下を実現し、湿度に左右されない安定導電性
  • 耐薬品性・柔軟性といったPE固有の特性を維持
  • 燃料タンクや配管(静電気蓄積防止のための帯電防止PE)
  • 電子部品用の導電性フィルム・袋
  • 半導体製造装置部品(クリーン環境用)など
  • 作新工業(NL-AS(B))
  • 三ツ星ベルト(UHMW-ASB)など
ポリカーボネート(PC) あり
  • カーボンファイバー
  • カーボンブラック
  • 金属繊維など
  • カーボン系フィラーや金属フィラーの添加で体積抵抗率10^1~10^4 Ω・m程度の導電性を発現
  • CF充填により機械的強度・剛性が向上し、金属繊維使用でEMIシールド効果も高い
  • 成形収縮が小さく寸法安定性良好
  • 電子機器筐体(スマホやPCの筐体に用いられ電磁波シールド効果を発揮)
  • プリンターのトナーキャリアなど静電気除去が必要な部品
  • 各種電子デバイスケース(ESD対策用)など
  • 住化ポリカーボネート(導電ポリカーボネート)
  • コテック(Kotex )など
ナイロン6/66(PA6/66) あり
  • カーボンファイバー
  • ※一部カーボンブラック
  • カーボンファイバー充填タイプの導電グレードが一般的
  • CF配合により体積抵抗値を10~10^2 Ω・m程度まで下げつつ、強度・剛性や耐摩耗性が向上する
  • ※カーボンブラック配合による導電グレード例も存在
  • 吸湿による特性変化はあるものの、安定した導電性を付与可能
  • 機械的強度と導電性を活かし、摺動部品(ベアリング、ギアなど)での摩擦帯電防止に使用
  • 静電気対策が必要な機械構造部品や電子機器用治具、車載電装部品(コネクタ類)など幅広い
  • タキロンポリマー(PA 910CV)
  • 三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ(MC501CD R2)など
PPS(ポリフェニレンサルファイド) あり
  • カーボンファイバー
  • カーボンブラック
  • 金属粉末など
  • 高耐熱・難燃のPPSに導電フィラーを高充填しても寸法安定性や耐薬品性を維持
  • 表面抵抗率は10^1~10^6 Ω程度まで低下し、金属代替として十分な導電性を発現可能
  • カーボン繊維による補強で剛性が高く、成形精度も良好
  • 高温環境下での静電・EMI対策用途に適し、自動車の電装部品筐体(ECUケース等)の金属代替やセンサーハウジングに利用
  • 実際にサーボモーターのエンコーダーカバーやギアポンプ部品に導電PPSが採用されている
  • 東レ(TPS-PPS230-AE3)
  • 帝人(SOLFIGA®導電グレード)など
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン) あり
  • カーボンファイバー
  • カーボンブラック
  • CNT
  • 導電性セラミックなど
  • フィラー組合せ次第で導電性から帯電防止性まで調整可能
  • たとえば30%CF+導電性フィラー配合グレードでは安定して102 ~ 104 Ω以下の低抵抗と高剛性を両立。
  • 一方で、導電性セラミック微粒子を用いた帯電防止グレードでは10^2~10^4 Ωの表面抵抗特性を持ち、加工後の歪みも少ない
  • いずれもPEEK固有の耐熱・機械特性をほぼ維持
  • 半導体・電子製造装置の部品(高応力下でも高速静電気放電から保護が必要な部位)に多用
  • 耐薬品・耐熱性が求められる計測機器部品や真空下の治具類
  • 防爆環境(ATEX対応)の樹脂部品など極めて過酷な環境で静電気対策が必要な用途に用いられる
  • エンスィンガー社(TECAPEEK シリーズ)
  • アドバンストマテリアルズ(導電性PEEK素材 | 5400シリーズ)など
  • 表中の抵抗値は代表例であり、フィラー配合量や種類により導電性は調整可能です
  • 「帯電防止グレード」は導電グレードほど高い導電性ではありません(一般に10^9~10^13 Ω・m程度)

まとめ

導電性樹脂は樹脂母材や導電フィラーの種類によって、導電性・耐熱性・強度・用途が大きく異なります。本章の一覧表を活用することで、要求性能や使用環境に応じた最適な導電グレードを効率よく比較・検討できます。

導電性の付与方法

充填剤や導電化による導電性の付与

それでは、プラスチックにどのようにして導電性を持たせるか、その代表的な方法を解説します。先述の導電性高分子(ICP)は、材料自体が電子を移動できる構造を持つため特別な化学的な添加処理によって導電性を発現させます。

一方で、導電性フィラーを用いる方法では、樹脂に以下のような導電材を配合することで電気を流す経路を形成します。

導電性樹脂を作る方法としては「樹脂自体を導電性にする」か「導電性の物質を樹脂に混ぜる」かの2通りがあり、特に後者では、どの種類のフィラーをどれだけ配合するかが重要になります。配合技術としては、樹脂ペレットと導電フィラーを押出機などで溶融混練するコンパウンド工程が一般的であり、フィラーを均一に分散させることが高い性能を引き出す鍵です。

近年では、二軸押出機による高度な分散技術や、混合状態を評価するX線CT(マイクロCT)なども活用され、導電フィラーの効果を最大化する生産技術が発展しています。

カーボン系フィラー(炭素材料)|軽量で化学的安定性が高い

もっとも一般的な導電フィラーです。例として、カーボンブラック(微細な炭素粒子)、グラファイト(黒鉛微粉末)、カーボンファイバー(炭素繊維)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン(炭素原子のシート状構造)などが挙げられます。これらは、比較的軽量で化学的安定性が高く、樹脂中で導電ネットワークを形成して電気を通します

カーボンブラックは古くから使われる安価な添加剤で、主に静電気防止や低~中程度の導電性付与に用いられます。カーボンファイバーやCNT、グラフェンはカーボンブラックよりも高い導電性を持ち、少ない量で導電ネットワークを構築できるため高性能用途向けに利用されます。

金属系フィラー|非常に高い導電性を付与できる

銅粉末や銀粉末、ニッケル粉末などの金属粉、あるいは繊維状にした金属ファイバーです。金属は本質的に高い導電率を持つため、これらを高充填すれば樹脂に非常に高い導電性を付与できます。

たとえば、銀や銅の微細粒子を高濃度で練り込んだ樹脂は、カーボン系より桁違いに低い抵抗率が得られ、コネクタ筐体や電子機器ハウジングの電磁波シールド用途などに使われます。

ただし、金属フィラーは比重が大きく重量増になること、高価であること、さらに銅やアルミニウムなどは酸化による劣化のおそれもあるため注意が必要です。

その他の添加剤|プラスチック表面の帯電防止

上記以外にも、弱い導電性を付与するための添加剤として界面活性剤型の帯電防止剤などが挙げられます。たとえば、ステアリン酸エステル系の添加剤(PETSなど)は樹脂中でわずかな電離性成分を発現し、プラスチック表面の静電気を逃がす帯電防止用途に用いられます。

これらは安価ですが、強い導電性は得られないため、一時的な静電気対策用途に限定されます

まとめ

導電性樹脂は樹脂自体を導電化する方法と、導電性フィラーを混合する方法に大別されます。特に、フィラー方式では、種類や配合量、分散状態が導電性能を左右するため、目的に応じた材料選定と加工技術が重要です。

導電性樹脂の特徴

導電性樹脂の特徴と選定方法

導電性樹脂に使用される導電フィラーにはさまざまな種類があり、その選択は求める導電性能とコストや他の特性とのバランスで決まります。この章では、一般的なフィラー種別ごとの特徴と、材料選定時のポイントについて解説します。

カーボンブラック系|安価で高い効果を得られる

極めて微細な炭素粒子で、安価かつ広く利用されています。比較的高い充填量が必要ですが、均質に分散させやすく、安定した静電気拡散性能が得られます。安価な割に効果が大きいため、帯電防止用途(静電気を緩やかに逃がす程度の用途)や低~中レベルの導電性付与に適しています。

ただし、高濃度で配合すると樹脂が黒色に着色されるため、着色性が犠牲になる点に留意が必要です。また多量の充填により機械特性(靭性など)が低下しやすい傾向もあります。

カーボンファイバー系(炭素繊維、カーボンナノファイバーを含む)|少ない添加量で導電性を得られる

カーボンブラックより高いアスペクト比(長さ径比)を持つため、より少ない添加量で導電ネットワークを構築できます

たとえば、約30%程度の炭素繊維を混合すれば、かなり低い体積抵抗率が得られます。また、繊維自体が補強材となり、機械的強度や剛性を高める効果も期待できます。そのため、自動車や航空機の構造部材のように強度と導電性の両立が求められる用途で選択されます。

一方で、繊維長さによる成形時の取扱い難しさ(折損防止など)や、表面に繊維が露出して外観が粗くなる可能性に注意が必要です。

カーボンナノチューブ(CNT)・グラフェン系|機械的柔軟性を保ちながら導電性を付与できる

カーボン材料の中でも、ナノテクノロジーを駆使した新しいフィラーです。CNTは筒状の分子構造、グラフェンはシート状の炭素原子膜で、いずれも非常に高い導電性と高アスペクト比を持ちます。少量(数%程度)でも導電ネットワークを形成でき、樹脂の本来の機械的柔軟性をあまり損なわずに高い導電性を付与できる点が利点です。

現在は、センサやアクチュエータなど高性能電子部品向けや、軽量・高強度を生かした先端用途に用いられています。

ただし、単価が高価であること、樹脂中で凝集しやすく分散の難易度が高いことが課題となります。また、CNTやグラフェンを含む複合材料は黒色となるため、着色用途には向きません。

金属粉末系(銀・銅・ニッケルなど)|もっとも高い導電性を発現できる

フィラー自体の導電率が極めて高いため、もっとも高い電気伝導性を発現できます。十分な量を充填すれば、成形品全体でほぼ金属並みの低抵抗を実現することも可能です。銀や銅は電磁波シールド(EMIシールド)用途で頻繁に使われ、たとえば、電子機器のコネクタや筐体内部に塗布・成形して外来ノイズを遮蔽するのに用いられます。

一方で、銀は材料コストが非常に高い、銅は酸化被膜の形成や腐食の問題がある、金属全般に比重が大きく重量増につながる、といったデメリットもあります。このため、金属フィラーは必要最低限の量で、目的の導電性を満たすように配合設計されるのが一般的です。

また、最近では金属と他のフィラーを組み合わせて相乗効果を狙ったハイブリッドフィラー(ニッケルめっき炭素繊維など)も開発されています。

ステンレス繊維系|少量でも効果が高く着色も可能

金属フィラーの一種ですが、繊維状で高アスペクト比を持ちます。ステンレス製の極細ファイバーは、少量でも効果が高く、CNTに匹敵する導電性を発現する例もあります。

また、フィラー自体が銀や銅より安価で、着色も可能(炭素系フィラーと異なり材料が黒くならないため)といった長所があります。ステンレスは機械的強度や耐熱性にも優れるため、EMIシールドと同時に筐体強度を要求される用途などで検討されます。

短所は、やはり高価で比重が大きい点と、高濃度では樹脂の流動性低下や成形加工時の金型摩耗が起こりやすい点です。

導電性高分子(ICP)系|樹脂自体が導電性を持つ

樹脂自体が導電性を持つタイプです。代表例として、ポリチオフェン系(PEDOT:PSSなど)やポリピロール、ポリアニリンがあります。一般的に、フィルム状の塗布材料や薄膜コーティングとして使われ、樹脂バインダーに混合した導電性インクや塗料の形で製品化されています。

ICP単体は、熱可塑性樹脂のような強度や成形加工性を持たないものが多いですが、他の樹脂とブレンドしてペレット化したり、コーティング剤として既存部材に塗ることで利用されます。たとえば、透明導電性フィルム用途では、酸化インジウムスズ(ITO)の代替としてPEDOT:PSSコーティングが開発・実用化されています。ICPは高価ですが、微量で効果を発現でき、かつフィラーと異なり透明性や柔軟性に優れる点で独自の利点があります。

ただし、長期間の環境安定性(紫外線や熱による劣化など)は課題となりやすいため、用途に応じた安定化対策(紫外線カット層の追加など)が必要です。

選定のポイント|コストと性能のバランスに注意

選定のポイントとしては、要求される導電性レベルに対し最適なフィラー種と必要量を見極めることが重要です。

たとえば、「静電気でホコリを付けない程度」であれば安価な帯電防止剤やカーボンブラックで十分ですが、「電子部品を安全にグランド接続する」にはカーボンファイバーやCNT混入樹脂、「外来ノイズを遮蔽する筐体」にはステンレス繊維や銀コーティング樹脂、といった具合です。

高い導電性が必要だからと言って、フィラー量を増やし過ぎると、コスト増や加工性悪化だけでなく、機械強度や靱性低下など他の性能面でのトレードオフも無視できません。そのため、要求仕様を満たす最小限のフィラー量で済むように、高性能フィラーを選んだり複数種を組み合わせる工夫も行われます。

実際、フィラー供給メーカーやコンパウンドメーカーは「○○の用途には何%添加」といったガイドラインや専用グレードを提示しており、それらの情報も参考に最適な材料を選定すると良いでしょう。

まとめ

導電性樹脂の性能は、導電フィラーの種類や配合量によって大きく左右されます。必要な導電性レベルに応じて、コストや機械特性、加工性とのバランスを考慮し、最適なフィラーと配合設計を行うことが重要です。

導電性樹脂の検討項目

導電性樹脂の検討における項目

導電性樹脂を検討する上で重要な性能として、電気的特性・機械的特性・耐熱性・成形加工性などが挙げられます。これらについて、導電フィラーの種類や含有率による一般的な傾向を比較します。

電気的特性(導電率・抵抗率)|用途にあわせて抵抗率を調整

目的に応じて広い範囲の導電性を実現できます。表面抵抗率でみると、通常の絶縁樹脂は10^12 Ω・m以上ですが、導電性樹脂では10^10~10^4 Ω・m程度(帯電防止用途)から10^4~10^2 Ω・m(静電気放電(ESD)対策)、さらに10^2 Ω・m未満(電磁波シールド用途)まで調整可能です。必要な導電性レベルに応じて、フィラー種類と量を設定し、パーコレーション閾値を超えるように設計します

たとえば、カーボンブラックでは体積比で数十%が必要な場合でも、CNTやグラフェンなら数%で十分な導電ネットワークを形成できます。

ただし、金属並みの超高導電(金属の1%以下の低抵抗など)は基本的に難しく、非常に高濃度のフィラーや特殊なフィラーを用いても限界があります。したがって、極めて大きな電流を流す用途(配線そのものなど)では金属に軍配が上がりますが、静電気対策やシールド目的であれば、十分実用レベルの導電性が得られるのが導電性樹脂の強みです。

機械的特性(強度・靱性など)|フィラーを含む樹脂は靱性や伸びは低下するが、剛性や寸法安定性は向上

樹脂にフィラーを混ぜ込むと、一般的に靱性や伸びは低下し、剛性や寸法安定性は向上する傾向があります

また、フィラーの種類によっても影響は異なり、粒子状フィラー(カーボンブラックなど)は広く樹脂マトリックスに分散して一様な補強効果を示すのに対し、繊維状フィラー(炭素繊維など)は配向方向による強度の異方性が現れます。さらに、高充填では樹脂が脆くなりがちで、落下衝撃などに弱くなる場合があります。

機械的要求が高い部品(構造部材など)では、必要な導電性を満たす範囲でできるだけフィラー量を減らす、あるいは繊維系フィラーで補強効果を狙う、といったバランス設計が求められます

耐熱性・熱的特性|フィラー添加や温度変化による特性の変動に注意

連続使用温度や熱変形温度といった耐熱性自体は、主に樹脂母材の種類に依存します

導電フィラーを入れても、樹脂の融点やガラス転移点が大幅に上がるわけではないため、使用環境温度に応じてポリオレフィン系(PEやPPなど)、エンジニアリングプラスチック系(PCやナイロンなど)、さらに高耐熱スーパーエンプラ系(PPSやPEEKなど)といった母材選択が重要です。

しかし、フィラー添加により副次的に熱伝導率は向上する傾向があります。金属や炭素系フィラーはいずれも熱をよく伝えるため、高充填した導電性樹脂は通常の樹脂より熱放散性が高く、発熱する電子部品の放熱材料としても有利です。

一方で、温度変化による抵抗値の変動にも留意が必要です。樹脂は熱膨張するため、導電ネットワークの接触状態が変化し抵抗が増減する場合があります。導電フィラーでは、温度上昇に伴い電気伝導度が変化するため、設計時に使用温度範囲での抵抗安定性を評価すべきです。繰り返し熱サイクルを受ける環境では、樹脂とフィラーの熱膨張差による微小クラック発生など長期信頼性の検討も必要です。

成形加工性|フィラーの添加量と加工性のバランスに注意

導電フィラーを多く含むコンパウンドは、一般に溶融粘度が高くなり成形時の流動性が低下します。そのため、射出成形では金型まで樹脂を充填しきれないショートショットや、押出成形では均一な押出が難しくなる等の問題が生じやすくなります。

この対策として、充填量を必要最低限に抑える、成形機の温度・圧力条件を最適化する、ゲート径や流路を太く設計する、といった工夫が行われます。また、繊維系フィラーを使う場合、射出成形時の高いせん断応力で繊維が切断され、本来の性能が発揮できなくなるおそれがあります。そのため、必要に応じてスクリュー形状を穏やかな混練向けに変更したり、フィラーを途中からサイドフィードするなどの手法も取られます。

さらに、フィラーによっては成形機や金型に対する摩耗性が高いもの(ガラス繊維同様に炭素繊維や金属粉も金型を摩耗させます)もあるため、生産設備の耐久性やメンテナンスも考慮が必要です。

総じて、導電性樹脂の成形では「通常の樹脂と金型で成形できるか」や「フィラーを均一に分散させた高品質なコンパウンドを得られるか」が重要なチェックポイントとなります。

もっとも近年は、一部メーカーからは加工性と導電性を両立した独自フィラー技術により、通常の射出・押出成形や3Dプリンター造形にも適した高充填導電ペレットも開発・提供されつつあります。

まとめ

導電性樹脂の検討では、導電性だけでなく、機械特性・耐熱性・成形加工性まで含めた総合評価が欠かせません。用途条件を踏まえ、フィラー種類や配合量による特性変化とトレードオフを理解した材料選定が重要です。

導電性樹脂の用途

電子機器から医療機器までさまざまな分野に活用

導電性樹脂はその特性を活かし、さまざまな分野で実用化されています。この章では、主な用途分野と具体例を挙げます。

電子機器分野|フレキシブル基板やタッチパネルに活用

軽量で成形自由度が高い導電性プラスチックは、電子・電気機器に広く利用されています。たとえば、フレキシブル基板やタッチパネル、各種コネクタ部品に用いられ、配線や接続部分の軽量化・一体化に貢献します。

また、スマートフォンやノートPC内部のEMIシールド部材(筐体内側のシールドケースなど)にも、金属箔の代わりに導電性樹脂製のシートや成形品が採用されています。静電気対策用途では、ICトレイや電子部品の包装材にも導電性樹脂製品(導電性PE袋やPSトレイなど)が用いられ、輸送・保管中の静電気放電(ESD)から敏感な電子部品を保護しています。

自動車分野|燃料系配管やエンジン制御ユニットで採用

自動車産業でも電子化の進展に伴い、導電性樹脂の用途が拡大しています。代表例の一つは、電磁波干渉(EMI)シールド用途で、エンジン制御ユニット(ECU)や車載電子機器のケースに導電樹脂が使われ始めています。金属ケースに比べて、軽量で成形の自由度が高く、量産コストも低減できるためです。

また、燃料系配管部品(フューエルホースやタンク周り)に導電性樹脂を用い、静電気の蓄積・火花放電を防止する例もあります。塗装工程においても、樹脂バンパーなど外装部品に微量の導電材を配合しておくことで車体と同様に静電塗装を可能にし、塗装効率を上げる手法が取られています。

さらに電気自動車(EV)では、高電圧バッテリー周辺の部品(バッテリーケースや配線カバー)に導電樹脂が使われるケースもあります。これにより、車両の軽量化と部品点数の削減が図れ、EVの航続距離向上や製造の簡素化に寄与します。特に自動車分野では、大量生産かつ安全性要求が厳しいため、信頼性の高い導電性樹脂材質の開発・採用が進んでいます。

医療分野|人体に使用するセンサーに活用

医療機器にも、導電性ポリマーの活躍が見られます。たとえば、生体内で使われるカテーテルや各種生体センサーには、微弱な電気信号をやり取りするための導電性ポリマーコーティングが施されている場合があります。

これにより、体内の安全なレベルで電流を通し、心臓ペーシングや脳波計測といった医療行為が可能になります。また、医療用電子機器の筐体に導電性樹脂を使い、静電気による誤作動防止やEMIシールドを行う例もあります。

近年、注目されるウェアラブル医療デバイス(生体モニタリング用の貼付センサなど)では、伸縮性を持つ導電性エラストマー材料が開発され、皮膚に貼っても違和感のないフレキシブル電極として使われ始めています。医療用途では、生体適合性や安全性も重要であり、金属を使わず樹脂ベースで電極や配線を構成できることは、MRI対応などの点でも有利です。

建築・建材分野|住宅用の建材としても採用が進む

一見縁遠いようですが、建築材料にも導電性樹脂は応用されています。典型例は、帯電防止床や静電気対策フローリングで、エレクトロニクス工場やデータセンターの床材に炭素繊維入り樹脂モルタルや導電性塗料が用いられています。

これにより、人や台車の移動で生じる静電気を速やかに逃がし、機器の誤動作や火花放電事故を防止します。

同様に、手術室や火薬庫など静電気の厳禁な空間でも、導電性の床・壁コーティングが採用されています。また、スマートウィンドウの分野では、導電性高分子が窓ガラスに塗布され調光(電圧に応じて透過率を変える)に使われたり、透明アンテナ素子としてビルのガラスに印刷される例もあります。

加えて、近年の住宅では、床下に導電性樹脂フィルムを敷設した床暖房システム(樹脂フィルム発熱体)なども実用化されており、建築分野でも電気機能を持つ樹脂材質が徐々に普及してきています。

まとめ

導電性樹脂は電子機器、自動車、医療、建築分野まで幅広く活用されています。軽量性や成形自由度を活かしつつ、静電気対策やEMIシールドなどの電気機能を付与できる点が、多様な用途拡大を支えています。

導電性樹脂設計における留意点

性能とコストのバランスを考慮して設計・検討する

製品設計者の観点から、導電性樹脂を実際に採用する際に考慮すべきポイントをまとめます。導電性樹脂は従来の金属や絶縁性樹脂とは異なる特性を持つため、設計段階での注意事項やコスト・性能バランスの見極めが重要です。

必要最低限の導電性能を満たす設計|もっとも低コストな材料を選定

導電フィラーの種類と量によって得られる導電性は調整可能です。しかし、高い導電性を追求しすぎると、コスト増・性能低下を招くため、「その用途で必要な抵抗値を満たせれば十分」という発想で過剰性能を避けることが経済的です。

たとえば、静電気対策なら10^6~10^8Ω程度の表面抵抗で足りて、EMIシールドでも要求シールド効果に応じた抵抗率でよい場合が多いです。要求を満たす中で、もっとも低コストな材質と充填率を選定することが設計上の肝となります

機械特性とのバランス|強度と耐久性に注意

静電気対策部品でも、実用上は機械的強度や耐久性が必要です。導電性樹脂はフィラー量が多いほど脆くなる傾向があるため、強度が必要な部位ではフィラー選択に工夫が要ります

たとえば、筐体のねじ止め部などには、カーボンブラック主体より繊維主体のフィラーの方が強度維持に有利です。逆に、クッション材のように柔軟性が欲しい場合は、エラストマー樹脂にイオン性導電剤を練り込むなどして必要最低限の導電性を持たせる方法も考えられます。

繊維系フィラー使用時には、成形方向による強度・導電性の異方性も出るため、形状設計時に繊維配向を想定した肉厚・リブ配置にするなどの配慮も有効です。

成形加工上の注意|流動性の低下に注意

導電性樹脂コンパウンドを射出成形する際は、流動性低下による不充填やウェルドライン集中による強度低下などに注意します。金型設計では、ゲート位置を複数設けて充填距離を短くする、湯道を太くする、樹脂温度を高めに設定する、といった対策が取られます。

フィラーによる金型摩耗対策として、金型にコーティング処理を施すことも効果的です。押出成形品では、口金の摩耗やフィルター目詰まりに気を付け、定期的なメンテナンスを計画します。生産ロットごとに抵抗値ばらつきが出ないように、フィラー分散の品質管理(混練条件の最適化や試験片での抵抗測定)も重要な実務ポイントです。

採用事例から学ぶ|導電性樹脂を用いて軽量化

過去の採用事例を参考にすると、導電性樹脂のメリットを最大化しやすくなります。

たとえば、自動車の樹脂燃料タンクでは、導電性樹脂を用いることで静電気を逃しつつ、軽量化と腐食フリー化を実現した例があります。近年のEV用コネクタでは、外装シェルに導電性樹脂を採用してシールド性能を持たせ、従来の金属シェルより約50%の軽量化と一体成形によるコストダウンに成功しています。

他にも、携帯電話のアンテナ部品で導電性樹脂が使われ、複雑形状の内蔵アンテナを樹脂一体で成形して組立工数を削減したケースなどがあります。

このように、金属とプラスチック双方の利点を引き出した設計事例を調査し、自社製品への適用可能性を探ることが有益です。

金属代替の可能性評価

導電性樹脂は「金属ほどの性能はないが設計自由度が高いプラスチック」と位置付けられます。したがって、金属部品を直接置き換える場合、要求特性を満たせるかを丁寧に評価する必要があります

たとえば、シールドケースなら必要なシールド効果(dB)が得られるか、接地スプリングのように通電路になる部品なら抵抗値・発熱は許容範囲か、構造部材なら機械強度・耐熱寿命は問題ないか、などの検討項目があります。導電性樹脂は金属に比べて、軽量・錆びない・加工しやすいなどの利点がありますが、一方で導電率や熱的安定性で劣ることも確かです

そこで、金属部品の機能のうち、どの部分を妥協できるかを判断し、要求を満たせるなら積極的に置き換える、難しければ部分的な採用やハイブリッド構造(金属部に導電性樹脂をインサート成形するなど)に留める、というアプローチが現実的です。

幸い、近年の製品設計では、電子部品の小型化・高密度化に伴い細かな形状や一体成形が要求される場面が増えており、そのようなケースでは、設計自由度の高さが勝る導電性樹脂に軍配が上がることも多くなっています。

実際「複雑形状だが電気的につながっていてほしい」というパーツでは、射出成形で任意の形状を作れる導電樹脂は極めて有用です。金属代替を検討する際は、小型軽量化・工程集約によるトータルコストメリットも評価しましょう。材料単価だけを見ると金属より高い場合でも、組立工程の削減や製品軽量化による付随メリットを考慮すれば、全体として有利になるケースも少なくありません。

まとめ

導電性樹脂の採用では必要な導電性能を満たしつつ、強度や加工性、コストとのバランスを取ることが重要です。金属代替を含め、部品全体の軽量化や工程削減まで視野に入れた総合的な設計判断が求められます。

導電性樹脂のまとめ

用途要件に合わせて「樹脂 × フィラー」を最適化しよう

導電性樹脂は樹脂に導電性を付与することで、軽量性や成形自由度を保ちながら静電気対策やEMIシールドに対応できる材質です。導電性高分子と導電フィラー複合の2系統があり、用途に応じて抵抗値レンジを設計できます。

導電性樹脂の設計ポイント

  • 要求導電レベルの整理:帯電防止/ESD対策/EMIシールドなど、目的に応じて抵抗値目標を設定
  • 母材 × フィラーの選定:耐熱・強度・耐薬品性などの母材特性と、カーボン/金属などのフィラー特性を両立
  • 配合量と分散品質の確保:パーコレーションを意識し、必要最小限の充填量で性能とコストを最適化
  • 加工性・信頼性の評価:流動性低下、摩耗、温度変動による抵抗変化など量産条件での安定性を確認

導電性樹脂は金属代替として有効な一方で、導電性・強度・加工性・コストなどのトレードオフが必ず発生します。グレード比較や用途事例を参考にしつつ、部品全体の工程削減や軽量化まで含めた総合最適で材質を選ぶことが重要です。

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導電性樹脂は要求される抵抗値レンジ(帯電防止/ESD/EMI)やフィラー配合によって候補グレードが分かれ、形状・肉厚・ゲート設計次第で成形性や抵抗値の安定性も変わります。そのため、材料選定と並行して、まず試作して条件を詰める進め方が、立上げの近道になります。

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導電性樹脂のように「材料 × 加工条件」でコストが動きやすい部品でも、早い段階で概算を掴めるため、設計変更やグレード比較の判断がスムーズになります。試作の段取りや量産立上げの検討に、ぜひQuick Value™をご活用ください。