樹脂の耐熱性と連続使用温度一覧
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本記事では樹脂の耐熱性、とりわけ連続使用温度について、その基礎から各種材質の比較、設計上のポイントまで解説します。樹脂ごとの耐熱メカニズム(分子構造や結晶性)、代表的な材質の耐熱温度、そして実務における注意点を把握することで、設計者は用途に最適な材質を選択しやすくなります。
高温下環境で樹脂部品を使用する際は、ぜひ本記事の内容を参考に材質のポテンシャルを最大限に引き出しつつ、安全で信頼性の高い製品設計に役立ててください。
樹脂の耐熱性とは何か|高温下で性能を維持できるのかを表す指標

樹脂(プラスチック)の耐熱性とは、材質が高温下でどれだけ性能を維持できるかを示す指標です。特に重要なのが連続使用温度と呼ばれるパラメータで、機械的・電気的特性が著しく劣化しないで長期間使用できる温度上限を指します。
ただし、連続使用温度は一義的な値ではなく、評価規格や評価対象特性(電気・機械など)、想定寿命によって定義・数値が異なることには注意しましょう。
たとえば、自動車エンジンルームや工業用機器の部品では、動作中に高温にさらされるため、この連続使用温度を超えない材質を選定することが信頼性確保の鍵となります。一般的に耐熱樹脂と呼ばれる材質は、目安として連続使用温度が150℃以上(短時間なら250℃程度まで耐える)と定義されることが多く、150℃を超える環境でも長期使用に耐える高性能な樹脂を指します。樹脂の連続使用温度は、製品の寿命や安全性にも直結するため、材質選びの重要な判断基準になります。
なお、樹脂の耐熱性には、短期的な耐熱温度(熱変形温度HDTなど)と長期連続使用温度の2種類があります。熱変形温度は一定荷重下で試験片が変形してしまう温度で、瞬間的な耐熱限界を示します。
一方で連続使用温度は、規格や想定寿命などの条件下で物性低下が一定範囲に収まるとされる温度上限で、長期信頼性の目安となります。ただし、温度が範囲内でも劣化は進み、薬品・紫外線・荷重条件などで信頼性は変わります。
つまり、短時間であれば耐えられる温度でも、長期間その温度に晒すと劣化が進み性能が損なわれる場合があり、その境界がおおよそ「連続使用温度」として示されます。
まとめ
樹脂の耐熱性は「高温下で性能を維持できるか」を示す指標で、実務では、短期のHDTより長期の連続使用温度が重要です。連続使用温度は規格や寿命条件で値が変わる点も押さえておきましょう。
樹脂の連続使用温度一覧|プラスチックによって耐熱性は異なる
この章では、各種樹脂材質の代表的な連続使用温度の目安を以下の表にまとめました。実際の値は、グレードや評価方法によって異なるため、おおよその参考値です。
低~中温域では汎用樹脂、高温域ではエンプラやスーパーエンプラが使用される傾向が読み取れます。
| 材質名 | 連続使用温度の目安(℃) |
|---|---|
| ポリエチレン(PE) | 80~100 |
| ポリプロピレン(PP) | 100~130 |
| ポリ塩化ビニル(PVC) | 50~80 |
| ポリスチレン(PS) | 65~80 |
| ABS樹脂(ABS) | 60~100 |
| ナイロン66(PA66) | 80~130 |
| ポリカーボネート(PC) | 120~130 |
| ポリアセタール(POM) | 80~100 |
| ポリフェニレンサルファイド(PPS) | 200~220 |
| ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) | 250~260 |
| ポリエーテルイミド(PEI) | 170 |
| ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) | 260 |
- 上記は標準的なグレードの場合の参考値です。ガラス繊維強化など特殊グレードではさらに高い連続使用温度を示す場合があります。
- 上記の出典値はメーカー・規格によって異なります。
まとめ
樹脂の耐熱性は材質ごとに大きく異なり、連続使用温度を把握することが適切な材料選定の第一歩です。汎用樹脂は中低温域、エンプラやスーパーエンプラは高温用途に適しており、用途条件に応じた比較が重要になります。
樹脂の耐熱性の仕組みと影響因子|分子構造や結晶性、添加剤によって特性が変わる

樹脂の耐熱性は、主に材質の分子構造や物性によって決まります。分子構造上、鎖を構成する原子間の結合エネルギーが高いほど熱に強く、また分子鎖同士の運動が抑制されるほど軟化しにくくなります。この章では、耐熱性に影響を与える代表的な因子を解説します。
分子構造の剛直性(芳香環や架橋構造)、結晶性の度合い、添加剤や強化剤の有無が、樹脂の耐熱性を決定づける主要因子となります。
これらに加え、樹脂の分子量(鎖長が長いほど熱で鎖運動が起きにくい)や官能基の安定性(エステル結合は加水分解しやすく高温多湿に弱いなど)も耐熱劣化特性に影響します。耐熱性向上の材料開発では、主鎖に耐熱性の高い構造単位を導入したり(PA4TやPA9Tのようにポリアミドにベンゼン環を導入)、結晶構造を最適化したりする工夫がなされています。
分子構造(主鎖の剛直性・芳香環の有無など)|芳香環族構造が高耐熱性に影響
高耐熱樹脂の多くは、分子骨格中にベンゼン環などの芳香族構造を含んでおり、これが熱安定性を高める大きな要因となっています。
ベンゼン環のような剛直な環状構造では、加熱によって分子鎖が動き出すのを強く抑え、分子が熱で分解に至るまでに多くの結合切断が必要になりやすく(アルカン鎖などの脂肪族構造では単一結合の切断で済む)、結果的に樹脂の融点や分解温度が高くなります。
たとえば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリフェニレンサルファイド(PPS)などは主鎖に芳香環を有し、優れた耐熱性を示します。
また、エポキシやフェノール樹脂のように、熱硬化性樹脂は加熱によって三次元網目状に架橋構造を形成するため、一度硬化すると溶けずに高温でも形状を維持できるという特徴があります。
結晶性(結晶構造の有無と程度)|結晶性が高い材料ほど剛性が保ちやすい
樹脂は半結晶性と非晶質(アモルファス)の大きく2種類に分類でき、この違いが耐熱挙動に影響します。
半結晶性樹脂では、分子内に結晶領域が存在し、明確な融点を示します。融点に達するまでは、剛直な結晶構造のおかげで高温下でも比較的形状と強度を維持しやすく、熱的に安定です。
一方で、非晶質樹脂(アモルファス樹脂)は分子鎖が無秩序に絡み合った構造のため、はっきりした融点を持たず、加熱するとガラス転移温度(Tg)付近から徐々に軟化していきます。そのため、非晶質樹脂は一般的に半結晶性樹脂と比べて耐熱変形温度は低めですが、逆に成形収縮が小さく寸法安定性に優れる、透明性を持つものが多いなどの長所もあります。
総じて、結晶性が高く融点の高い材質ほど高温下で剛性を保ちやすいため、耐熱性に優れる傾向があります。ただし、結晶化度が高すぎると低温で脆くなるなどのトレードオフもあります。
添加剤・強化剤|添加剤や強化剤によって熱特性に変化が現れる
樹脂は必要に応じて耐熱安定剤や強化フィラーを配合することがあり、これも熱特性に大きく影響します。典型的な例として、ガラス繊維強化では、樹脂にガラスファイバーを混ぜることで高温下での剛性・寸法安定性を向上させ、結果として耐熱変形温度や連続使用温度を引き上げる効果があります。
たとえば、ガラス繊維で強化したポリアミド(ナイロン)は、未強化品に比べて10~20℃程度連続使用温度が向上します。また、セラミック系フィラーや炭素繊維の添加、難燃剤の配合(自己消火特性の付与によって高温下での安全マージンが増す)なども耐熱性改善に用いられます。
一方で、可塑剤の添加はガラス転移温度を下げて樹脂を柔軟にするため、高温下では不利になる場合があります。添加剤の種類と量は、最終製品の耐熱限界や劣化挙動を大きく左右する重要な設計パラメータです。
以上のように、分子構造の剛直性(芳香環や架橋構造)、結晶性の度合い、添加剤や強化剤の有無が、樹脂の耐熱性を決定づける主要因子となります。これらに加え、樹脂の分子量(鎖長が長いほど熱で鎖運動が起きにくい)や官能基の安定性(エステル結合は加水分解しやすく高温多湿に弱いなど)も耐熱劣化特性に影響します。耐熱性向上の材料開発では、主鎖に耐熱性の高い構造単位を導入したり(PA4TやPA9Tのようにポリアミドに芳香環を導入など)、結晶構造を最適化したりする工夫がなされています。
まとめ
樹脂の耐熱性は分子構造の剛直性や芳香環の有無、結晶性、添加剤・強化剤の配合など複数の要因で決まります。材質ごとの特性を理解することで、用途に適した耐熱樹脂の選定や性能向上の検討がしやすくなります。
樹脂の種類と耐熱性の比較|特性によって3つに分類される
樹脂材質は、その性能と用途から汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)、そしてスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)の大きく3種類に分類されます。耐熱性の観点から各分類の代表例を概観し、典型的な連続使用温度について比較してみましょう。
汎用樹脂|安価で扱いやすいが耐熱性は低い
汎用樹脂とは、大量生産され幅広い用途に使われる一般的な樹脂を指し、価格が安く扱いやすい反面、耐熱性は高くないものが多いです。
代表的な5大汎用樹脂には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS)、そしてABS樹脂(ABS)が挙げられます。これらは通常、連続使用温度がおおよそ50~100℃程度であり、100℃を超える高温環境で長時間使用すると変形や劣化が生じやすくなります。
たとえば、家庭用品や日用品に使われるポリエチレンやポリプロピレンは、80~100℃前後が実用上の耐熱限界で、沸騰水程度の温度で長時間使用すると軟化・変形する恐れがあります。
塩化ビニル(PVC)は耐候性に優れ配管などに使われますが、耐熱性は60~80℃程度で、それ以上では硬質塩ビは脆化し可塑剤を含む軟質塩ビは軟化します。ポリスチレン(PS)やABS樹脂も耐熱はせいぜい80~100℃程度で、電子レンジや自動車エンジンルームのような高温には向きません一応、ABSには耐熱グレードもありますが、連続使用では100℃強が限度です。
汎用樹脂は100℃未満の用途(日用品容器、玩具、家電筐体など)でコスト重視で使われる一方で、これ以上の温度がかかる用途では、次に述べるエンプラ材質が検討されます。
エンジニアリングプラスチック(エンプラ)|汎用樹脂に比べ機械的強度や耐熱性に優れる
エンプラ材質は汎用樹脂よりも機械的強度や耐熱性に優れ、自動車や機械部品など比較的過酷な環境下での使用に耐える樹脂群です。明確な定義はありませんが、一般的に連続使用温度がおおむね100℃以上を満たす樹脂がエンプラと呼ばれます。
代表的な5大エンプラとして、ポリアミド(PA、ナイロン)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM, デルリン)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、通称PPO樹脂)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられます。
これらは分子構造中にベンゼン環などを含むものが多く、汎用樹脂よりも分子鎖が剛直なため、高温下での性能維持に優れています。
たとえば、ナイロン(PA66)は約260℃の融点を持つ半結晶性樹脂であり、連続使用温度は100℃前後が目安で、強化・耐熱グレードではさらに上がる場合があります。ポリカーボネート(PC)は非晶性ですが、ガラス転移点が147℃と高く、連続使用温度は約120℃程度で自動車灯具や電子機器筐体にも耐え得ます。ポリアセタール(POM)は摺動特性に優れ歯車などに用いられますが、耐熱はおよそ100℃前後です。
エンプラは汎用樹脂と比べて、高温下でも強度・剛性を保ちやすく、100~150℃程度までの用途で広く活躍しています。もっとも、エンプラと言えども150℃を超えるような領域では長期使用に耐えられないため、さらに高性能なスーパーエンプラが必要になります。
スーパーエンジニアリングプラスチック|150℃以上の高温でも強度・耐薬品性を維持
スーパーエンプラはエンプラよりもさらに高い耐熱性・強度・耐薬品性を持つ最先端の樹脂材質です。一般的に、連続使用温度が150~200℃を超えるような樹脂がこのカテゴリに属し、自動車の高温部品や航空宇宙分野、電子デバイスなど、極めて厳しい環境下で使用されます。スーパーエンプラの多くは、分子構造中に大量の芳香環や強固な化学結合を含み、熱的・化学的安定性を飛躍的に高めています。
代表例として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)などが挙げられます。
これらの樹脂は、連続使用温度で200~300℃に達するものが多く、たとえば、PPSは約200℃、PEEKは250℃前後の環境で長期使用可能です。なかには、PBIのように300℃を超える温度域でも機械的強度を維持できるものも存在し、金属代替材料として注目されています。
ただし、スーパーエンプラは非常に高価で加工も難しいため、要求される性能とコストとのバランスを見極めて選定する必要があります。近年の電気自動車や航空機の技術革新に伴い、スーパーエンプラの需要は高まっており、部品軽量化や高温環境での信頼性向上に寄与しています。
まとめ
樹脂は耐熱性の観点から、汎用樹脂・エンプラ・スーパーエンプラの3種類に大別されます。使用温度や強度要求に応じて適切なカテゴリを選ぶことが、性能とコストのバランスを取るうえで重要です。
成形条件と設計上の耐熱性への影響|データシート上の数値以外に注意すべき点

実際の樹脂の耐熱性能は、材料データシート上の数値だけでなく、成形加工条件や製品設計にも大きく左右されます。この章では、成形時の要因と設計段階で注意すべき点について解説します。
成形条件の影響|樹脂や金型の温度、冷却速度、二次加工などの条件に注意
樹脂を成形加工する際の条件(射出成形の樹脂温度・金型温度、冷却速度、二次加工の有無など)は、最終製品の耐熱性に直結します。
たとえば、半結晶性樹脂では、冷却速度が速すぎると十分な結晶構造が形成されず結晶化度が低下し、その結果耐熱性(熱変形温度や連続使用温度)が下がることがあります。逆に、成形後にアニール(熱時効処理)を行い、結晶化度を高めることで、耐熱性を向上させられる場合もあります。
実際に、PEEK樹脂部品などでは成形直後に熱処理して、内部応力を除去しつつ結晶化を促進する工程が推奨されています。
また、成形時の熱履歴も重要です。射出成形では、樹脂の溶融温度や滞留時間が長すぎると分子鎖が熱劣化し、分子量の低下によって高温下での強度が落ちてしまいます。特に、ポリカーボネートやポリエステル樹脂など、加水分解しやすい材質は、乾燥不足で成形すると分解が進み耐熱性・機械強度が低下します。
このように、適切な成形条件で材質本来のポテンシャルを引き出すことが、耐熱特性確保の前提となります。
設計上の留意点|膨張率や紫外線、薬剤の影響を考慮
樹脂部品を高温用途に使う際は、材料選定のみならず設計段階での対策も欠かせません。
まず、使用温度が材質の熱変形温度(HDT)やガラス転移点を超えないように設計することが基本です。高温下で荷重がかかる部位では、HDTに十分な安全率を持たせないと変形や歪み(熱たわみ)が発生し、機能不全に陥る恐れがあります。高温環境では、樹脂のクリープ(長時間荷重下での徐々な変形)が早まるため、荷重を分散する構造や補強リブの追加などで対応します。
次に、寸法安定性にも注意が必要です。樹脂は一般的に金属よりも熱膨張係数が大きく、高温になると膨張してクリアランスが変化したり、冷却時に収縮不均一によって反りや変形が起きることがあります。
半結晶性樹脂では、繊維強化や充填剤の利用で膨張を抑えられますが、設計段階でも使用温度範囲での寸法変化を見込み、クリアランスや公差を設定することが重要です。
さらに、熱劣化への備えも考慮しましょう。樹脂は空気中で高温に曝されると、酸化によって徐々に劣化し、変色・クラック・脆化が生じます。必要に応じて、耐熱安定剤入りのグレードを選択したり、金属部品で遮熱したり、通気を良くして過度な熱蓄積を防ぐ対策が有効です。
環境要因では、湿度や紫外線(UV)、薬品の影響も見逃せません。たとえば、ポリカーボネートやナイロンは湿度の高い環境下で高温にさらされると、加水分解や加水膨潤を起こし、ガラス転移温度の低下や寸法変化を招きます。屋外で高温使用する場合は、UVカット剤の添加や耐候グレードの採用が望ましく、化学薬品と高温が重なる環境では、耐熱かつ耐薬品性を備えた樹脂を選ぶ必要があります。たとえば、高温下での強アルカリにポリカーボネートは不適なため、PPSやPEEKが適します。
総じて、「材質の潜在的な耐熱性能を損なわない成形」と「使用環境に応じた設計上の配慮」が組み合わさって、はじめて紙面上の連続使用温度通りの性能が実現されると言えます。
まとめ
樹脂の耐熱性はデータシートの数値だけでなく、成形条件や設計配慮によって大きく左右されます。冷却速度や乾燥条件、使用環境を踏まえた設計を行うことで、材質本来の耐熱性能を引き出せます。
実務に役立つ材料選定のアドバイス|樹脂の性能やコストとのバランスなどさまざまな視点で検討
最後に、経験者の視点から高温環境での樹脂材料選定に関するポイントをまとめます。
用途要求の明確化|安全率を考慮に入れ余裕を持った設計が必要
最適な材質を選ぶためには、まず、製品の使用環境と要求特性を正確に把握することが重要です。その用途で想定される温度範囲(常用温度と短時間の最大温度)、必要な機械的強度・剛性、さらには絶縁性や耐電圧性などを明確に定義します。
たとえば「最高○○℃で○時間連続使用し、機械的強度が初期の80%以上維持できること」などの目標を設定し、それを満たせる樹脂候補を絞り込みます。また、材料データシートの連続使用温度や相対温度指数(RTI値)は実験室環境での長期耐熱性を示す指標ですが、設計にあたっては十分な余裕を持った温度マージンを取ることが肝要です。
できれば、樹脂は連続使用温度の8~9割程度までに抑えて使う方が安全で、設計寿命中に想定外の温度上昇があっても破綻しないようにします。
性能とコストのバランス|オーバースペックはコストアップにつながる
要求特性を満たす材質は複数あり得ますが、コストと性能のトレードオフを考慮した選定が必要です。高機能樹脂ほど原料価格や成形費用が高くなり、特殊な加工プロセスを要する場合もあります。
したがって、必要以上に高価なスーパーエンプラを用いると、コスト超過や加工性の悪化につながる可能性があります。たとえば、200℃程度の使用条件であれば、短時間では最高300℃に耐えるPEEKではなく、より低コストなPPSやナイロン系で代替できないか検討する価値があります。
また用途によっては、ポリプロピレンやASA樹脂などの比較的安価な材質でも十分に要件を満たすケースもあります。複数候補の中から、必要最低限の性能を満たしつつ、コスト効率の良い材質を選ぶことが求められます。
環境条件の考慮|類似の使用事例を参考にする
使用環境(周囲の温度・湿度、大気か密閉か、屋内外、薬品接触の有無など)が材料選定に与える影響も見逃せません。
たとえば、高湿下では吸湿しやすい樹脂は、寸法変化や強度低下を起こすため、ナイロンよりもPPSやPBTの方が有利です。
屋外の高温環境であれば、紫外線による劣化も考えて、耐候グレードやUV安定剤入りを選ぶ必要があります。また、化学プラントの高温部品なら、媒体となる薬品に耐える樹脂(フッ素樹脂系やPEEKなど)を選定する必要があります。
環境要因によって樹脂の耐熱寿命は大きく左右されるため、データシート上の数値だけでなく、実使用環境での劣化試験結果や類似事例を参考に材質を評価すると安心です。
材料選定ミスのリスク|十分な情報収集と検討が必要
とある調査では、材質の選択ミスは樹脂製品の故障原因の中で、全体の約45%という大きな割合を占めるとのデータもあります。実際に、耐熱要求を満たさない樹脂を選んでしまったために製品テスト中に破損し、のちのち適切な高耐熱材質に変更することで問題を解決したという事例もあります。
このような失敗を避けるためには、材料選定段階で「最悪条件でも性能を維持できるか?」を十分検討し、必要ならば設計変更や材料変更を厭わない姿勢が大切です。
また、開発初期に複数の材質で試作評価を行い、早い段階で問題を顕在化させておくことも有効です。経験者の教訓として、「カタログスペックを鵜呑みにせず、安全側に倒した材料選択を」や「迷ったら実サイクルの環境試験を実施せよ」といった心得が知られています。
材料選定は製品の成否を左右する重要事項であり、十分な情報収集と検討を行うことで、はじめて安心して使用できる樹脂材質を選定することができます。
まとめ
樹脂の材料選定では、耐熱性だけでなく使用温度・環境条件・強度・コストのバランスを総合的に判断することが重要です。安全率を持った設計と十分な評価を行うことで、選定ミスや早期劣化のリスクを抑えられます。
樹脂の耐熱性と連続使用温度を理解し、最適な材料選定につなげよう
樹脂の耐熱性は、高温環境下で性能や形状をどこまで維持できるかを示す重要な指標であり、実務では短期の耐熱温度よりも連続使用温度の把握が欠かせません。材質ごとに耐熱限界は大きく異なり、分子構造や結晶性、添加剤の有無、さらに成形条件や使用環境によって実際の耐熱性能は変動します。
樹脂耐熱性の設計ポイント
- 使用温度の設定: 連続使用温度やHDTを基準に、安全率を持たせて設計温度を決める
- 成形条件の最適化: 樹脂温度・冷却速度・乾燥条件を適正化し、結晶化不足や熱劣化を防ぐ
- 寸法安定性への配慮: 熱膨張や反りを想定し、クリアランスや補強リブで変形リスクを低減する
- 環境要因の考慮: 湿度・紫外線・薬品接触などの影響を見込み、耐候・耐薬品グレードを選定する
樹脂の耐熱性はカタログ数値だけで判断せず、材質の特性や加工条件、使用環境を総合的に見極めることで、長期的に安定した性能と信頼性を確保できます。
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