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PP(ポリプロピレン)の特性・加工・設計の実務ガイド

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PP(ポリプロピレン)の特性・加工・設計の実務ガイド

PP(ポリプロピレン)は熱可塑性の高分子材質であり、日常から工業まで幅広い用途に使われる代表的な樹脂です。エチレンから作られるPE(ポリエチレン)に次いで、世界で2番目に生産量が多い汎用樹脂であり、軽さや耐薬品性、機械的強度などのバランスに優れています。

本記事では、そんなPP(ポリプロピレン)の特性や具体的な用途、最新の技術動向について解説しています。最後にPP(ポリプロピレン)製品設計者の視点から、材質選定や設計・成形上のポイントをについてまとめているので、ぜひ参考にしてください。

PPの概要

PP(ポリプロピレン)とは?

PP(ポリプロピレン)

PP(ポリプロピレン)は低圧法によって製造される代表的なポリマーです。プロピレンガスを触媒の存在下で重合することで合成され、スラリー法・溶液法・気相法といったプロセスが工業的に採用されています。

生成するPP(ポリプロピレン)樹脂粒子は半透明で着色しやすく、触媒種や重合条件を変えることで分子量や結晶性、共重合組成などを調整してさまざまなグレードを作り分けることができます。たとえば、エチレンを数%共重合させたランダム共重合PPや、重合段階でエチレン-プロピレンゴム成分を取り込んだブロック共重合PP(インパクト共重合体)などが製造され、透明性や低温衝撃特性の改善に役立っています。

原料のプロピレン単量体は、ナフサなど石油軽質留分の熱分解(クラッキング)によりエチレンと共に得られる副生成物です。以前は、エチレン製造の副産物に過ぎなかったプロピレンですが、PP(ポリプロピレン)開発以降その需要は飛躍的に高まり、現在ではエチレンに並ぶ重要な石油化学原料となっています。

製造されたPP(ポリプロピレン)樹脂は、用途に応じてペレット状に造粒され市場に供給されます。成形・加工法としては、射出・押出・ブロー成形など多様な方法に適しており、この汎用性もPP(ポリプロピレン)が広く普及した一因です。生産量は年々増加を続けており、その成長率は他の汎用樹脂を上回る水準にあります。

まとめ

PP(ポリプロピレン)はプロピレンから合成される汎用樹脂です。軽量かつ加工性に優れており、多彩な成形法に対応し、用途や性能に応じて多様なグレードが展開されています。

PPの物性

軽量かつ耐久性・耐衝撃性が高く長寿命が要求される製品に適する

PP(ポリプロピレン)はプラスチックの中で、PE(ポリエチレン)と並んで世界トップクラスの生産量を誇る汎用樹脂です。その軽さと加工のしやすさから、日用品から産業用途まで幅広く使用されています。

この章では、PP(ポリプロピレン)の主要な物性についてメリットを整理して解説します。

軽量性|水よりも軽く製品の軽量化に貢献

PP(ポリプロピレン)は密度が約0.90~0.91 g/cm³と樹脂の中でも非常に軽量であり、製品の軽量化に寄与します。

たとえば、自動車部品に使用すれば、車両全体の軽量化によって燃費や省エネルギー性の向上が期待でき、包装材料では、輸送時の重量削減によるコストダウンに繋がります。また、人が手に持つ製品においても「軽い=扱いやすい」という利点があります。

耐薬品性|有機溶媒に侵食されにくく、薬品容器に活用

PP(ポリプロピレン)は多くの化学物質に対して優れた耐性を示します。酸、塩基(アルカリ)、アルコールや多くの有機溶媒に侵されにくく、腐食しにくい性質があります。このため、化学薬品の容器や配管、医療用器具、実験器具など、腐食液や溶剤に触れる用途に適しています。

ただし、強酸や強い酸化性の薬品(芳香族炭化水素やクロム酸など)には弱く、接触すると劣化することがあるため注意が必要です。

耐久性・耐衝撃性|長寿命が要求される製品に適する

PP(ポリプロピレン)は高い靭性(粘り強さ)を持ち、衝撃に対して割れにくい頑丈な材質です。繰り返しの衝撃や荷重にも耐えるため、長寿命が要求される製品(自動車バンパー、工業用コンテナなど)に適しています。

また、疲労耐性(繰り返し曲げに対する強さ)にも優れており、適切に設計されたPP(ポリプロピレン)製のヒンジ(いわゆるライブヒンジ)は、百万回以上の開閉にも耐えることができます。ペットボトルの一体型キャップのように、何度も折り曲げる部分にもPP(ポリプロピレン)は使われています。

さらに、エチレンを含むブロック共重合タイプのインパクトコポリマーPP(ポリプロピレン)では、耐衝撃性が特に向上し、低温環境下でも割れにくく改良されています。標準的なホモポリマーPP(ポリプロピレン)が低温で脆くなる、という短所を補ったものと言えます。

耐熱性|他の汎用樹脂と比べて高温に耐える

PP(ポリプロピレン)は融点がおよそ160~170℃で、汎用樹脂の中では比較的高い数値を示します。たとえば、同じポリオレフィン系のPE(ポリエチレン)の融点が約130℃前後であるのに対し、PP(ポリプロピレン)は約168℃であり、耐熱温度が高いため、100℃程度の環境でも形状や強度を保ちやすいというメリットがあります。

PP(ポリプロピレン)製品は電子レンジ対応の食品容器や、自動車エンジンルーム周辺の部品など、高温状況でも使用されています。また耐熱ゆえに、熱変形温度(荷重下で変形し始める温度)も高めなので、同じ条件下ではHDPE(高密度ポリエチレン)などよりも変形しにくいという傾向があります。

ただし、通常グレードのPP(ポリプロピレン)は約110℃付近から柔らかくなり始めるため、長時間170℃近い環境にさらした場合、変形の恐れがあり、必要に応じてガラス繊維強化や耐熱安定剤入りのグレードが用いられます。

成形加工性と多用途性|さまざまな成形・加工方法に対応可能

PP(ポリプロピレン)は熱可塑性樹脂であり、射出・押出・ブロー・真空成形や延伸(フィルム化)・繊維化など、さまざまな成形・加工法に対応できます。溶融状態の粘度が低く流動性(メルトフローレート)が高いため、複雑な形状の金型でも隅々まで樹脂が行き渡りやすく、薄肉部品や微細形状の成形にも適しています

たとえば、精密な電子機器用の樹脂部品から、大型の中空容器、フィルム状の包装材、繊維状のフィラメントまで、硬質から軟質まで幅広い製品をPP(ポリプロピレン)で作ることができます。また着色性にも優れ、マスターバッチなどでさまざまな色を容易に表現できるため、カラーバリエーション展開もしやすい材質です。

耐水性・低吸湿性|吸湿性が低く、湿度や水濡れを伴う環境で多用

PP(ポリプロピレン)は極めて吸水しにくい樹脂で、24時間水中に浸けても水分をほとんど(0.01%以下)吸収しません。そのため寸法安定性が高く、水に長時間さらされる用途でも膨張や劣化が起こりにくいです。水に強い性質から、家庭用品(タッパーウェアなど)や配管資材など、湿度や水濡れを伴う環境で多用されています。

また、「ほとんど水分を含まない=電気を通しにくい」ということを意味するため、PP(ポリプロピレン)は電気絶縁性にも優れています。湿気下でも絶縁性能を維持できることから、配線の被覆や電子機器の筐体などの電気部品にも用いられます。

低コスト|流通量が多く、リサイクル性も高い

PP(ポリプロピレン)は原料価格が安価で大量生産に適した材質のため、経済的な樹脂です。世界的に見ても、PE(ポリエチレン)に次ぐ流通量を誇るため、価格が安定しており、使い勝手の割にコストメリットが大きいことから多くの製品で採用されています。

さらに、熱可塑性ゆえに廃棄後のリサイクルも比較的容易です。不要になったPP(ポリプロピレン)製品は、粉砕して再溶融することで再生樹脂(リプロPP(ポリプロピレン))として再利用でき、純度の高い廃棄PP(ポリプロピレン)からは高品質の再生ペレットが製造可能です。

実際に、PP(ポリプロピレン)素材は繰り返しリサイクルして、新たな製品に生まれ変わらせる取り組みが広く実施されています。また、PP(ポリプロピレン)は加熱による再成形を繰り返しても、物性が大きく劣化しにくく、リサイクル適性の高い樹脂と言えます。

まとめ

PP(ポリプロピレン)は軽量・高耐久・耐薬品性・耐熱性など、さまざまな特性に優れています。多様な成形加工が可能なうえ、リサイクル性も高いため、コストパフォーマンスに優れた汎用樹脂と言えます。

PPの短所

低温環境では割れやすく、紫外線に弱い

PP(ポリプロピレン)は軽くて強く、さらに安価というバランスの取れた特性から、現代の製造業に欠かせない樹脂です。

その一方で、低温環境や屋外での耐久性や接合方法、環境への影響などいくつかの弱点も持っています。

低温脆化|氷点下になると割れやすい

PP(ポリプロピレン)は温度が低下すると、急激に靭性が失われ、寒冷環境では脆くなりやすいという欠点があります。常温では衝撃に強いPP(ポリプロピレン)も、氷点下になると衝撃強度が大幅に低下して、割れやすくなるため、耐寒性を求められる用途には不向きです。

寒冷地でPP(ポリプロピレン)製品を使用する際は、衝撃に対する安全マージンを考慮するか、または前述のように、エチレンプロピレンゴムを混入した耐衝撃性グレードのPP(ポリプロピレン)(ブロック共重合PP(ポリプロピレン))を使用して低温脆化を抑制する工夫が必要です。それでもなお、PE(ポリエチレン)ほどの低温柔軟性は得られないため、極寒環境では慎重な材質選定が求められます。

UV耐性|数か月~数年で強度が劣化

無添加のPP(ポリプロピレン)は、太陽光中の紫外線を長期間浴びると化学分解を起こし、表面が白亜化(チョーキング)して粉っぽくなったり、細かなひび割れが発生したりします。いわゆるUV劣化に弱いため、屋外でPP(ポリプロピレン)製品を使用する場合、何も対策をしないと数か月~数年で強度が低下し、破損しやすくなります。

そのため屋外用途では、紫外線吸収剤・安定剤の添加や、カーボンブラックで着色して光を遮断する、あるいは表面に塗装やフィルム被覆を施すなどの耐候対策が必須となります。また耐候グレードのPP(ポリプロピレン)(HALSと呼ばれる光安定剤入りなど)を選定することで、紫外線による劣化を大幅に抑えることができます。

接着・塗装|接着剤による接合や塗料の塗装が困難

PP(ポリプロピレン)の表面は化学的に安定した非極性で、表面エネルギーが非常に低いため、接着剤による接合や塗料の塗装が困難です。一般的な接着剤では、PP(ポリプロピレン)表面にうまく濡れ広がらず、強力に密着させることができません。

塗装しても塗膜が剥がれやすく、印刷インクもそのままでは乗りにくい性質です。このため、PP(ポリプロピレン)同士または他素材との接合には、溶着(加熱融着)や機械的な締結(ねじ止めなど)が多用され、接着剤を使う場合でも、専用のプライマー処理やコロナ放電処理、フレーム(火炎)処理といった表面改質を行ってから接着する必要があります。

たとえば、自動車のPP(ポリプロピレン)製バンパーは、塗装前にプラズマ処理等で表面を活性化し、塗料の付着性を高めています。また近年では、自動車の異種材質接合のニーズに応えて、金属とPP(ポリプロピレン)を直接強力に接着できる接着剤や工法も登場していますが、いずれにせよ追加の工程やコストが必要となります。

難接合性|異素材との結合・固定に工夫が必要

上記の通り、PP(ポリプロピレン)は接着剤が使いにくいだけでなく、他の部品と一体化(接合)しにくい点にも注意が必要です。熱による樹脂同士の溶着は可能ですが、厚みや形状によっては溶着部に局所的な歪みや応力集中が生じ、繰り返し荷重で割れるリスクがあります。また、金属ねじによる締結では、下穴あけ時に材質が割れたり、長期間荷重がかかった際に、クリープ(経時変形)によって締結力が緩む恐れがあります。

硬いPP(ポリプロピレン)にネジ留めする際は、座ぐりやボス設計を工夫しないと割れが生じることがあります。さらにリベット留めなども、穴あけや圧入の際に応力が集中しやすいため、他のプラスチックに比べ加工条件がシビアです。このようにPP(ポリプロピレン)は異材との結合や固定方法の選定に工夫が求められる素材であり、設計段階から接合方法を考慮する必要があります。

難接合性|自己消火性が無く、火気に注意が必要

PP(ポリプロピレン)は燃えやすい樹脂であり、点火すると青色がかった炎を上げて燃焼し、溶けた樹脂が滴下しながら燃え広がります。自己消火性(火源から離すと自然に消える性質)を持たず、一度着火すると、火元を取り除いても燃焼が持続または拡大する場合があります。

実際に、PP(ポリプロピレン)の限界酸素指数(LOI)は約18と低く、空気中では容易に燃焼が支持されてしまいます。防炎性が求められる用途では、難燃剤を添加したPP(ポリプロピレン)の使用が必要です。

また、ハロゲン元素を含まないため、燃焼時の有毒ガス(ダイオキシンなど)の発生は塩化ビニル樹脂(PVC)ほどではないものの、燃焼時には有害な煤(すす)や一酸化炭素などが発生する可能性があるため注意が必要です。火気の近くで使用する部品には、基本グレードのPP(ポリプロピレン)は避け、自己消火性の樹脂や金属などの代替材も検討すべきでしょう。

まとめ

PP(ポリプロピレン)は軽量かつ高耐久の面で優れた材質ですが、低温や紫外線による環境、接着・難燃性には弱いという特徴があります。そのため、用途や環境に応じた対策と設計上の配慮が求められます。

その他汎用樹脂との比較

PP(ポリプロピレン)とその他汎用樹脂との比較

この章では、PP(ポリプロピレン)とよく比較される他の汎用樹脂(PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン))の主要な性能を表にまとめます。

HDPEと他汎用樹脂との比較
特性項目 PP PE PS PVC ABS
強度
(引張強度30MPa前後)

(HDPEの引張強度23~31MPa程度、LDPEは8~31MPa)

(引張強度36~52MPa)

(引張強度(硬質)41~52MPa程度)

(引張強度23~55MPa)
耐熱性
(連続使用温度120~130℃)

(HDPEの連続使用温度90℃、LDPEは80℃)

(連続使用温度60~95℃)

(連続使用温度60~65℃)

(連続使用温度60~95℃)
耐寒性
(-20~-10℃で脆化)

(HDPEは-80℃、LDPEは-70℃で脆化)

(0℃で脆化)

(-40~-20℃で脆化)

(-20℃で脆化)
耐薬品性
無機酸・塩基、アルコール、油脂類に強い
(※強い酸化性薬品、芳香族炭化水素や塩素系溶媒を除く)

化学的安定性が高い
(※強酸化剤を除く)

一般に多くの有機溶剤に溶解・軟化

無機酸・アルカリ・塩類に強い
(※ケトンや一部の有機溶媒(THFなど)を除く)

酸・アルカリにはある程度耐性を示す
(※多くの有機溶媒を除く)
透明性
標準グレードは半透明~不透明

LDPEは半透明(フィルムは乳白色)
HDPEは不透明(結晶化度高いため白濁)

非常に高い透明性(ガラス状)

樹脂自体は無色透明にできるが、通常は不透明

通常は不透明
※特殊グレードには透明ABSも存在
難燃性・自己消火性
自己消火性なし

自己消火性なし

自己消火性なし
燃え広がりやすい

自己消火性なし

自己消火性なし
成形加工性
射出成形で流動性が高く、複雑形状にも対応

フィルム押出、ブロー成形(ボトルなど)、射出成形など幅広く適用

成形収縮が小さく、寸法精度が出しやすい
薄肉長尺成形には不向きな場合も

射出成形では温度管理がシビア

非結晶で成形収縮が小さく寸法安定性良い
接着・塗装性
表面エネルギーが低く、接着剤や塗料が付着しづらい

非極性で接着困難

非極性だが、溶剤で表面を溶かして接着(溶着)することが可能

極性を持つため接着剤がよく付き、接合可能

表面に極性成分があり接着・塗装しやすい
コスト
PEに次いで単価が低い

全世界で大量生産され、市場価格も安定

PP(ポリプロピレン)・PEに次ぐ安さ

原料自体は安価
添加が必要なため製品は中価格帯

PP(ポリプロピレン)やPSより高価

まとめ

PP(ポリプロピレン)は耐熱性・耐薬品性・成形性・コスト面で優れたバランスを持ち、PEやABSなど、他の汎用樹脂と比べても多くの面で実用性の高い材質と言えます。

PPの成形・加工方法

PP(ポリプロピレン)の成形・加工方法|加工自由度が高く、用途に応じた成形法が選べる

PP(ポリプロピレン)の成形・加工方法

PP(ポリプロピレン)は熱可塑性のポリオレフィン樹脂であり、強度・剛性と軽量性、耐熱・耐薬品性などの物性に加え、加工のしやすさを兼ね備えた汎用樹脂です。そのため、自動車部品、家電や日用品、食品包装材、医療用品など、幅広い分野で利用され、射出成形から繊維加工まで多様な成形・加工法に適用されています。

この章では、PP(ポリプロピレン)の主要な成形・加工方法について解説します。

射出成形|摩擦係数が低く、射出サイクルの短縮に貢献

PP(ポリプロピレン)は射出成形材質として、非常にバランスの良い特性を示します。軽量でコストが低い上、適度な強度と剛性を持ち、耐薬品性や耐水性にも優れます。特に、疲労耐性が高く、繰り返しの曲げに強いため、ヒンジ部が一体成形されたリビングヒンジ製品に最適で、適切に設計されたPP(ポリプロピレン)製リビングヒンジは百万回以上の開閉にも耐えうるとされています。

さらに、摩擦係数が低いことから、成形品が金型から離型しやすく、射出サイクルの短縮に寄与します。これらの特性により、PP(ポリプロピレン)は射出成形分野で独特の地位を占める汎用樹脂となっています。

PP(ポリプロピレン)射出成形品は非常に多岐にわたります。たとえば、自動車のインパネ、バンパー内芯材、バッテリーケースなどの大型部品、洗濯機や冷蔵庫等の家電筐体、日用品のコンテナ、収納ボックス、文房具や玩具、食品容器(タッパーウェアなど)、医療用シリンジや検体容器、化粧品容器のキャップ類などが挙げられます。

PP(ポリプロピレン)は流動性が高く成形しやすいため、複雑な薄肉形状や細部まで充填が必要な成形に有利です。成形収縮が比較的大きい(通常1〜3%程度)ものの、比較的等方的な収縮挙動を示すため寸法安定性も確保しやすい部類です。

また、離型性が良く、ドラフト(抜き勾配)を小さくできるため、設計自由度が高くなります。さらに自己潤滑性があり摺動部品にも使え、他の樹脂に比べて、吸水しにくく成形前乾燥も不要な場合が多い点も取扱いやすさにつながります

押出成形|シート状、フィルム状などのさまざまな形状に対応

押出成形は、溶融したPP(ポリプロピレン)樹脂を連続的に押し出して、所定形状の製品を製造する方法です。単軸または二軸の押出機(エクストルーダー)のスクリューによって溶かされたPP(ポリプロピレン)が、ダイ(口金)と呼ばれる成形口から連続的な流れとして押し出されます。ダイの開口形状を変えることでシート状、フィルム状、パイプ状、棒状、異形断面など、さまざまな断面プロファイルを得ることができます

押出直後の樹脂は柔らかいので、キャリブレータ(定径装置)や冷却水槽・ロールで所定寸法に調整・冷却固化し、そのまま所定の長さにカットしたり巻き取ったりして製品化します。PP(ポリプロピレン)の押出法には、板・フィルム用のシート押出、包装フィルム用のフィルム押出(Tダイからのキャスト法や環状ダイからのインフレーション法など)、管材用のチューブ押出、合成繊維原糸を作るスピニング(紡糸)、ネットや中空シートを作るダイレクト成形など、多彩なバリエーションがあります。

PP(ポリプロピレン)は熱安定性と流動特性のバランスが良く、多くの押出法に対応できる材質です。半結晶性でメルトフローインデックス(MFI)の調整幅も広く、たとえば、繊維用に非常に流動性の高いグレード(高MFI)から、パイプ用に溶融強度の高いグレードまで品揃えがあります。PP(ポリプロピレン)は比重が0.90程度と軽量で、同じ体積の製品を作るにも樹脂使用量を削減できます。

また、耐熱性(融点約160℃)がPE(ポリエチレン)よりも高く、沸騰水や高温液体の流れるパイプにも使え、他に電子レンジ加熱対応のシート・フィルムとして食品容器にも適します。

押出成形は連続生産に適した、効率の高い加工法です。一度安定条件に乗れば不良が少なく、同一断面形状の製品を大量生産できます。PP(ポリプロピレン)は押出成形機内で熱分解しにくく、安定に溶融状態を保てるため、押出中の寸法変動が小さいという利点があります。また、再生材利用率が高くできることもPP(ポリプロピレン)押出の長所です。

ブロー成形|一体成形による中空構造を成形できる

ブロー成形は溶融したプラスチックを中空状に成形し、内側から空気圧で膨らませて中空構造の製品を作る方法です。PP(ポリプロピレン)の場合、大きく押出ブロー成形(溶融パリソンを型に挟んで膨らます)と射出ブロー成形(まずプリフォームを射出成形し、それを延伸・二次ブローする)に分類されます。

押出ブローでは、押出機から垂れ下がったチューブ状パリソンを金型で挟み、圧縮空気を吹き込んで型壁に押し付け冷却します。

射出ブローでは、PP(ポリプロピレン)で作った管状プリフォーム(試験管状中間成形品)を別のブロー型にセットし、加熱延伸しながらブローして目的の形状にします。

さらにブロー成形の応用として、射出成形とブロー成形を一体化した、インジェクションストレッチブロー成形(ISBM)もあります。PP(ポリプロピレン)はペットボトルの材質(PET)と比べて比重が軽く、耐熱温度も高いため、ホット充填飲料容器や電子レンジ対応容器などに適したボトル素材として注目されてきました。

しかし、ブロー成形で要求される溶融パリソンのホットパリソン強度(高温で垂れないこと)や延伸時の安定性が不足しがちなため、特殊な高性能グレードを用いるか、加工条件の微調整が不可欠です。

ブロー成形品でPP(ポリプロピレン)が選ばれる理由は、まず耐熱性の高さが挙げられます。PP(ポリプロピレン)製容器は100℃近い液体を入れる熱充填に耐え、煮沸消毒やオートクレーブ殺菌にも使えます。たとえば、哺乳瓶や介護用マグカップ、電子レンジ用保存容器などは、透明なPP(ポリプロピレン)ブロー成形品が多用されています。

ブロー成形の利点は、なんと言っても、一体成形による中空構造が得られる点です。溶接や組み立てなしに、一体のタンクやボトルが作れるため、シームレスで液漏れしない容器が簡便に得られます。また、金型が片面(雌型2枚)だけで済み、射出成形と比べて型構造が簡素で大型製品でも設備投資を抑えられます

デザイン面では、金型内で膨圧により形状を再現するため、曲面主体の滑らかな形を実現しやすく、複雑なアンダーカットも成形可能です。たとえば、燃料タンクのように、自動車の限られた空間に合わせた異形状も、設計自由度高く実現できます。

真空成形・熱成形|低コストで高機能な容器製造を実現

真空成形・熱成形は、PP(ポリプロピレン)シートなどの平板状材料を加熱して軟化させ、金型に押し付けたり、真空で吸引したりして所望の形状に成形する方法です。シートを軟化点以上に温め、一方の面に金型(凸型または凹型)をあてがって密着させます。

真空成形(負圧成形)では、金型側で空気を吸引してシートを型に吸い寄せます。

プレス成形や圧空成形(正圧成形)では、上から型もしくはプラグで押し込んだり、シート裏側から空気圧で押し付けたりします。冷却後、シートは金型形状を写し取った立体形状になり、トリミング(周縁の切断)を経て製品となります。

真空成形は、容器やトレー類の大量生産に適しており、PP(ポリプロピレン)の場合も押出シートとの組み合わせで使われます。PP(ポリプロピレン)シートの熱成形では、軟化状態でも比較的剛性が高いため、深絞り成形時にはプラグアシスト(押し込み用の栓)を用いて均一に延伸させるのが一般的です。

また、成形温度によって、ソリッドフェーズ(固相)成形とメルトフェーズ成形に分けられ、温度条件により製品特性が変化します。

PP(ポリプロピレン)シートの熱成形は、高価な射出金型を用いずとも、金型一つで多数個取りの成形が可能なため、小ロットから大ロットまで金型費が安価に済み、生産コストを抑えられます。

また、材料シートを加熱するだけのシンプルな工程ゆえ、成形サイクルが短く、多数個取りなら1分間で数十個以上の容器を生産できます。PP(ポリプロピレン)は熱伝導率が低く、ゆっくり冷えるため、熱成形時にシート表面に適度な延伸配向が生まれます。これにより、成形品の強度や耐衝撃性が向上し、結晶化の効果でバリア性(酸素・水蒸気透過のしにくさ)も良くなるという利点があります。

PP(ポリプロピレン)の自己ヒンジ特性(ヒンジ部が折れ曲がっても割れず繰返し使用可)により、折り畳み式容器やパカッと開閉するトレーなどのヒンジ付きブリスターも可能です。射出成形では難しい面積の大きな薄肉品でも、熱成形ならシートから容易に作れるため、大判トレーや一体区画割り容器も安価に量産できます

繊維化|ノズル詰まりしにくく、安定加工が可能

PP(ポリプロピレン)の繊維化加工には、大きく分けて長繊維(フィラメント)を紡糸する方法と、微細繊維を直接シート状にする不織布法があります。

前者では、溶融PP(ポリプロピレン)をノズルから押し出し、細い糸状に引き伸ばして冷却固化し巻き取ります。

後者の代表例は、スパンボンド法とメルトブロー法が挙げられます。

スパンボンドでは、溶融PP(ポリプロピレン)を比較的大きな孔径の紡糸口金から多数のフィラメントとして押し出し、これを急冷・高速牽伸して細径化・配向させます。できた連続長繊維をベルト上にランダムに積層し、熱圧融着または機械的絡合によって繊維同士を接合してシート状の不織布とします。

一方で、メルトブローでは、非常に細いノズルから溶融PP(ポリプロピレン)を押し出し、即座に高速熱風で吹き飛ばして微細繊維化します。直径1〜5µmほどの極細ファイバー状になったPP(ポリプロピレン)を、集積体としてベルト上に回収し、自己接着または追加圧着してシート状不織布にします。

スパンボンドは、太めで強度の高い連続繊維を形成でき、生産速度も速いのが特徴です。メルトブローは、極細繊維を大量に作れる反面、繊維は短く強度は低いため、主にろ過用途などでスパンボンド層と組み合わせて使われます。

PP(ポリプロピレン)繊維化の工程は、石油由来樹脂から直接シート状の繊維マットを作り出せるため、高い生産効率を誇ります。特に、スパンボンド法は不織布を連続生産でき、繊維径は細いとはいえ、織布に匹敵する強度を持つシートを安価に供給できます。

PP(ポリプロピレン)は融点付近で粘度が低く、ノズル詰まりしにくいため、メルトブロー法でも安定して極細繊維を吐出できます。得られた不織布は、熱で自己融着しており、接着剤などが不要で純度が高く、リサイクルもしやすい利点があります。

さらに、PP(ポリプロピレン)繊維は低比重な分、同じかさ高でも軽量であり、大判シートでも扱いやすく、輸送コストも低減できます。これは、衛生材料やフィルターを大量配布・設置する上で大きな利点です。

発泡成形|軽量・高耐久・リサイクル性を兼ね備えた素材

PP(ポリプロピレン)の発泡成形には、大きく射出発泡法(射出時に発泡剤を混入し発泡させる)と、ビーズ発泡法(発泡ビーズを金型内で二次発泡・融着させる)があります。

代表的な成形法は、ビーズ法による発泡PP(EPP:Expanded Polypropylene)です。EPP(ポリプロピレン)では、まずPP(ポリプロピレン)ペレットに発泡剤などを加えて、スチレン系発泡体と同様のビーズ状に膨張させた原料を調製します。これら発泡PP(ポリプロピレン)ビーズを金型に投入し、高温スチームで加熱することでビーズ表面を再融解させます。加圧下でビーズ同士が融合・接着し、冷却後に一体化した発泡成形品となって金型から取り出されます。

その他、PP(ポリプロピレン)の発泡射出成形(ミクロセル発泡技術による軽量化成形など)も行われていますが、ここではEPP(ポリプロピレン)ビーズ発泡成形に焦点を当てます。

EPP(ポリプロピレン)発泡成形の利点は、得られる製品が驚くほど軽量でありながら丈夫で壊れにくい点です。発泡倍率次第では、重量のほとんどを空気が占めるため、輸送コストの大幅削減や製品軽量化につながります。

しかも、一度成形した形状を長期間保持し、多少の衝撃では割れたり欠けたりしないため、長寿命です。また加工工程でも、スチーム加熱でビーズ同士を融着させるため、接着剤などは不要で、純粋なPP(ポリプロピレン)素材のみで構成されます。

その結果、リサイクル時には材料分別が容易で、粉砕して射出成形用マテリアルに戻したり、再度発泡成形用ビーズへリプロセスすることも可能です。金型面に直接触れる外観面はそれなりに滑らかで、発泡体特有の発泡模様(ビーズ跡)が気にならなければ、カラフルに着色した製品も作れます。

溶着|接着剤不要で実現する強固な接合

溶着とは、2つ以上の樹脂部品を熱で融かして接合する手法の総称です。PP(ポリプロピレン)は熱可塑性樹脂なので、熱を加えれば融解し、冷えて再固化すると、元の材質同士が一体化して強固に接合できます

代表的な溶着法には、部品同士の接合面を直接加熱プレートで溶かして押し付ける熱板溶着(ヒートシール)、高速振動を与えて摩擦熱で融着させる振動溶着・超音波溶着、高速で回転させた片部品の摩擦熱で融かすスピン溶着などがあります。

PP(ポリプロピレン)は溶融状態で酸化物を生じにくく、再融着しやすいため、同種PP(ポリプロピレン)同士であれば接着剤を使わずに接合できる点が大きなメリットです。特に、パイプ溶接(ヒーティングガス溶接)やインサート溶着(ボス穴に金属インサートを熱圧入)などは、PP(ポリプロピレン)樹脂製品で頻繁に行われています。

溶着を成功させるには、接合面の設計が重要です。

超音波溶着の場合、効率よく摩擦熱を発生させるために、片側に三角リブを設けるなどの設計を行います。PP(ポリプロピレン)は熱伝導が低いので、一点にエネルギーを集中させないと広範囲がじんわり温まり、溶着不良になることがあります。また、溶着面は密着度が命です。微細なホコリや油分があると、界面で融着不良を起こすため、前処理として洗浄やイオンブロー等で清浄度を高めます。

熱板溶着では、PP(ポリプロピレン)は過熱に弱く、焦げると界面が劣化して強度低下するため、加熱板の温度や接触時間を精密にコントロールします。特に、自動車燃料タンクの振動溶着では、振動周波数・圧力・溶着深さの管理を徹底し、溶着ビード形状が均一に出るように努めます。

まとめ

PP(ポリプロピレン)は射出・押出・ブロー・発泡成形など、多彩な成形・加工法に対応できます。形状・用途に応じて、最適な成形・加工法を選ぶことができる高い加工自由度も特徴の一つです。

PPの用途

PP(ポリプロピレン)の主な用途と応用分野|軽量性・耐熱性を活かした製品に活用

PP(ポリプロピレン)の主な用途

汎用樹脂として地位を確立したPP(ポリプロピレン)は、その特性を生かして非常に広範な分野で利用されています。

この章では、代表的な用途分野ごとにPP(ポリプロピレン)が選ばれる理由や具体例を紹介します。

自動車部品|軽量化・一体成形・環境対応に貢献

自動車産業は、PP(ポリプロピレン)樹脂の最大用途の一つです。PP(ポリプロピレン)は軽量で比較的安価でありながら、必要十分な強度・剛性を備えているため、自動車の内外装部品に広く採用されています。

たとえば、自動車バンパーやインパネ、ドアトリムなどの大型成形部品は従来ABS樹脂などが使われていましたが、現在では、ほとんどがPP(ポリプロピレン)系材質(PP(ポリプロピレン)とゴムとのブレンドであるTPOなど)に置き換わっています。

PP(ポリプロピレン)は衝撃に強く、成形収縮による歪みも小さいため、大型部品でも寸法安定性を確保しやすい利点があります。また、内装材(インストルメントパネル、ピラー、コンソールボックスなど)にも、充填剤強化したPP(ポリプロピレン)(タルクやガラス繊維で剛性を高めたグレード)が多用され、ABSやPVCに代わる主要材質となっています。

さらに、バッテリーケースや冷却水タンクなどの自動車用機能部品にもPP(ポリプロピレン)は使われます。耐酸性・耐薬品性が要求されるバッテリーの外箱は、希硫酸電解液に侵されないPP(ポリプロピレン)製ケースが標準的です。冷却系のリザーバータンクやウォッシャータンクも耐熱・耐液性からPP(ポリプロピレン)製が多く見られます。ただし、エンジン周りの高熱部位ではナイロンなどの他樹脂が使われる場合もあり、用途に応じて材質選択が行われます。

他にも、PP(ポリプロピレン)は発泡体(EPP(ポリプロピレン))として、衝撃吸収部材にも利用されています。たとえば、自動車の衝撃吸収フォーム(バンパー内側のエネルギーアブソーバやシートクッションなど)にEPP(ポリプロピレン)ビーズ発泡体が使われ、軽量で復元性に優れるため高い安全性能に貢献しています。

このように自動車分野では、軽量化・低コスト化・部品点数削減(樹脂による一体成形)を実現する材質として、PP(ポリプロピレン)の存在は不可欠です。成形自由度が高く(複雑形状を射出成形できる)、塗装無しでも着色可能な点も自動車部品向けに適しています。

ただし、紫外線による劣化対策(屋外暴露される外装部品ではUV安定剤の添加など)や、冬季の低温脆性への配慮(必要に応じてエラストマー改質したグレードを使用)といった留意点があります。

医療機器|滅菌に強く、成形しやすい

医療分野でもPP(ポリプロピレン)は重要な材質です。化学的に純粋で耐薬品性が高く、生体適合性も良好なため、体液や薬品と接触する医療器具・容器類に広く用いられています。たとえば、使い捨て注射器のシリンダー(筒部分)は、PP(ポリプロピレン)を射出成形で高精度に作っています。

注射器のみならず、輸液ボトル、培養シャーレ、ピペット、遠心分離チューブ、試薬ボトルなど、数多くの医療・実験器具がPP(ポリプロピレン)製です。これらは、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ、121℃15分など)に耐える必要がありますが、PP(ポリプロピレン)は高い耐熱性と寸法安定性により、繰り返しの滅菌処理に耐えます。実際に、オートクレーブ対応の試験管ラックやメスピペットなどはPP(ポリプロピレン)製であることが多く、滅菌後もほぼ変形しません。

医療用途では、耐薬品性・耐熱性・無毒性に加え、射出成形による量産適性が重要ですが、PP(ポリプロピレン)はこれら条件を満たすため、ディスポーザブル医療器具の主力材質となっています。

食品包装・容器|軽くて丈夫、無味無臭

PP(ポリプロピレン)は食品と直接触れる用途にも安心して使える樹脂であり、食品包装や容器に幅広く利用されています

まず食品用容器では、ヨーグルトやマーガリンのカップ、即席麺の容器、電子レンジ対応の保存容器などにPP(ポリプロピレン)が採用されています。特に、電子レンジ加熱や熱い充填に耐える点で優れており、PE(ポリエチレン)では変形するような100℃近い内容物でも、PP(ポリプロピレン)容器なら形状を保ちます。また、食器洗い乾燥機で洗っても劣化しにくいため、繰り返し使える食品保存容器(タッパーウェアなど)にも用いられます。

包装フィルム分野では、二軸延伸PP(ポリプロピレン)フィルム(BOPP(ポリプロピレン)フィルム)が代表例です。スナック菓子や乾麺などのパッケージ、ギフト用の透明袋などに使われ、透明性・強度に優れる包装材として広く普及しています。

そのほか、食品との相性が良い点として、無味無臭で成分が溶出しにくいこと、耐油性が高いことも挙げられます。

今後も環境対応(軽量化によるプラスチック使用量削減やリサイクル適性向上)が求められますが、PP(ポリプロピレン)は他の高分子材質と比べても、単一素材でパッケージを構成しやすく、分別しやすいという利点もあります。

建築資材|腐食しない、軽い、溶着できる材料として活用

建築・土木分野でも、PP(ポリプロピレン)はいくつかの用途があります。代表的なのは、給水・給湯用の配管材です。PP(ポリプロピレン)製の水道管・継手(PP(ポリプロピレン)-R パイプと呼ばれるランダム共重合PP(ポリプロピレン)製管)は、耐熱・耐圧性に優れ腐食しないことから、欧州を中心に建築物の給湯配管に広く使われています。

PP(ポリプロピレン)-R管は、80〜90℃程度の温水にも長期間耐え、金属管のように錆びたりイオンを溶出したりしないため、安全な飲料水供給が可能です。また、管同士の接合も熱融着によって行えるため、溶接に近い強固な接続が容易です。

この手法では、接着剤を使わずにパイプ同士を一体化でき、継手部からの漏れリスクも低減できます。PP(ポリプロピレン)-R管は軽量で扱いやすく、施工性にも優れることから、ビルの高層階配管や住宅の温水床暖房パイプなど、さまざまなシーンで採用されています。

一方で、屋外建材として、長期間荷重を支える用途(構造材)にPP(ポリプロピレン)が使われることはあまりありません。これは前述のように、クリープ(長期荷重によるたわみ)や耐候性の問題があるためです。

電子部品|電子機器に最適な絶縁樹脂

電気・電子分野でも、PP(ポリプロピレン)はいくつかの重要な用途があります。最大の利点は、絶縁性の高さと誘電特性の良さです。PP(ポリプロピレン)は高電圧下でも電気を通さず、かつ高周波電界中でもエネルギーロスが小さいため、コンデンサの誘電体フィルムに最適です。

実際に、エレクトロニクス機器に使われるフィルムコンデンサ(高周波回路や音響機器用など)では、PP(ポリプロピレン)フィルムが誘電体として一般的に用いられています。これは他材質(ポリエステルなど)と比べて、損失が小さく、自己修復性(局所的な絶縁破壊が起きても、周囲熱で穴が塞がる性質)にも優れるためです。このように、電気絶縁や誘電特性が求められる領域でPP(ポリプロピレン)は活躍しています。

ただし、電気分野では耐熱と難燃の要件も重視されるため、PP(ポリプロピレン)単体で適用するには限界もあります。必要に応じて、無機難燃剤の添加や他ポリマーとのアロイ化で特性補強した材質(PP(ポリプロピレン)樹脂に金属水酸化物を混ぜた難燃グレードなど)も開発されています。

まとめ

PP(ポリプロピレン)は自動車・医療・食品・建築・電子部品など、幅広い分野で活用されています。軽量性や耐熱性、加工性などを活かし、コスト・機能・環境性のバランスに優れた材質です。

PP設計における留意点

PP(ポリプロピレン)製品設計における実務上の留意点

根症では、実際にPP(ポリプロピレン)を扱う際に、設計者が心得ておくべきポイントを経験的視点から解説します。

要求特性とPP(ポリプロピレン)の適合性|極寒環境や130℃以上の高温に注意

まず、製品に求められる特性と、PP(ポリプロピレン)の持つ特性を突き合わせます。

PP(ポリプロピレン)は「軽量・耐薬品・耐水・適度な剛性・耐熱は中程度・耐衝撃は中程度・低温時脆くなる」というプロファイルです。したがって、軽さが求められる製品(携帯性、運搬コスト低減など)や、腐食しない素材が必要な用途(水回り、薬品容器など)では適合性が高いです。

一方で、-20℃以下の極寒環境や、連続130℃を超える高温環境では、PP(ポリプロピレン)は不得手なので、他材質を検討すべきでしょう。また、荷重が長時間かかる部位では、クリープ(たわみ)を起こしやすい点も考慮に入れます。たとえば、高温下でボルト締結される構造には、補強や金属インサートを併用した方が安心です。

グレード選択|用途にあわせてスペックを比較

PP(ポリプロピレン)には、ホモポリマーとコポリマー(ランダム、ブロック)があり、さらに充填剤や強化繊維入りの複合材質も存在します。それぞれ物性バランスが異なるため、用途に応じて適切なグレードを選ぶ必要があります

一般的に、ホモポリマーPP(ポリプロピレン)は剛性・耐熱性が高く、ランダム共重合PP(ポリプロピレン)は透明性と低温靭性に優れ、ブロック共重合PP(ポリプロピレン)(インパクトPP(ポリプロピレン))は衝撃強度が高いという傾向があります。

たとえば、透明な食品容器にはランダム共重合PP(ポリプロピレン)、寒冷地向け製品にはブロック共重合PP(ポリプロピレン)、といった選択が有効です。

また、自動車の機能部品などの高強度が欲しい場合は、ガラス繊維強化PP(ポリプロピレン)などのエンジニアリングプラスチックに近いグレードも検討しましょう。各社から豊富なグレードが出ているため、必要性能(曲げ剛性なのか耐衝撃なのかなど)を軸にカタログスペックを比較しましょう

法規制・安全性|安全性・加工性・環境性のバランスを検討

食品容器や医療用途では、PP(ポリプロピレン)は無添加のままでも安全性が高く、多くの国で食品接触適性が認められています。

材質選定時には、各種規制(FDAや食品衛生法など)への適合を確認し、必要に応じて食品衛生グレードや医療グレードのPP(ポリプロピレン)(より純度が高く、試験成績のあるもの)を採用します。

また、耐燃焼性が必要な家電製品向けなどでは、UL94規格の難燃グレード(V-2やV-0)を選ぶことも検討しましょう。

肉厚設計と収縮|肉厚や成形条件によって収縮挙動が変化

PP(ポリプロピレン)は半結晶性ゆえに、成形収縮率が大きく(約1%)、肉厚や成形条件によって収縮挙動が変化します

厚肉部では、冷却に時間がかかり、結晶化度が高まるため収縮が大きくなります。一方で、薄肉部や急冷条件では結晶化度が低く、収縮が小さくなります。

この差異により、反り変形が発生しやすいため、なるべく肉厚は均一にし、急激な厚み変化を避けることが望ましいです。厚みが変わる場合も、勾配をつけてなだらかに繋ぐことで歪みを低減できます。

成形法の選択|射出成形を検討し、難しい場合に他の成形法を選定

PP(ポリプロピレン)は射出成形性が非常に良い材質です。溶融粘度が低く流動性に富むため、薄肉から大型製品まで幅広く対応できます。

基本的には、射出成形を第一に検討し、サイズや形状的に困難な場合に限り、押出成形やブロー成形、真空成形などの他成形方法を検討することが一般的です。

たとえば、中空品(ボトル等)はブロー成形、フィルム・シートは押出や延伸、繊維はスピニング(紡糸)など、用途に応じて適切なプロセスを選択してください。射出成形の場合、金型設計の自由度が高く、多数個取りやインサート成形、ガスアシスト成形などの応用も利きます

成形不良対策|CAE流動解析を活用

PP(ポリプロピレン)成形品でありがちな不良として、ヒケ・ソリ・ウェルドライン・フローマークなどが挙げられます。

ヒケは前述の通り、肉厚設計と保圧条件で改善を図り、ソリ(反り)はゲート位置やリブ配置の工夫で対処します。

ウェルドライン(溶接線)は製品強度低下を招くため、重要部位にかからないゲート配置と充填シーケンスにするか、必要に応じて、ウェルド部にアンダーカットを設け補強するなどを検討しましょう。フローマーク(流れ跡)は射出速度を上げる、金型温度を上げる、ゲート径を拡大するなどで緩和できます。

いずれも、設計段階からCAE流動解析を活用すると効果的です。

まとめ

PP(ポリプロピレン)は軽量で耐薬品性、耐水性などに優れる一方で、低温環境や長期間の荷重に弱いという一面があります。用途に応じたグレード選定や、肉厚・収縮・成形不良を見据えた設計配慮が重要です。

PPのまとめ

軽量性・耐薬品性・加工性を活かし、量産部品の軽量化とコスト削減に貢献する汎用樹脂

PP(ポリプロピレン)は軽量かつ耐薬品・耐水性と中程度の耐熱性をバランス良く備え、射出成形をはじめ、多彩な成形・加工法に対応できる汎用樹脂です。特性と弱点を理解してグレードや成形法を選べば、自動車部品から医療機器、食品包装まで、幅広い製品で高いコストパフォーマンスを発揮します。

PP設計のポイント

  • 使用環境の整理:温度範囲(氷点下や130℃超は要注意)、薬品・荷重条件を洗い出し、PP(ポリプロピレン)で十分かどうか他材質も含めて評価する
  • グレード選定:ホモ・ランダム・ブロック共重合体や強化グレードから、剛性・透明性・耐衝撃性などの要求特性に合うものを選ぶ
  • 形状・肉厚設計:肉厚やリブ・ボスをできるだけ均一にし、成形収縮やソリ、クリープによる変形を抑える形状と締結方法を検討する
  • 成形法と規格対応:基本は射出成形を軸に、他成形法も検討しつつ、食品衛生・医療・難燃などの規格や環境性を満たす材質を採用する

PP(ポリプロピレン)は万能ではないものの、上記のポイントを押さえて設計すれば、軽量で長寿命な部品を効率よく量産できます。試作・量産段階では、適切なグレード選定と加工条件の最適化を行い、PP(ポリプロピレン)のポテンシャルを最大限に引き出しましょう。

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PP(ポリプロピレン)は幅広い加工方法に適した汎用樹脂です。用途によっては、薄肉成形ができるか、クリープを見込んだ寸法補正が必要か、ブロック・ランダム・ホモどのグレードが良いかなど、価格にも加工手法にも大きな影響が出ます。こうしたPP(ポリプロピレン)特有の加工条件の違いは、試作・量産の見積もりを複雑にしがちです。

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特にPP(ポリプロピレン)は、数量によって最適工法が変わる材質であり、試作は切削、量産は成形、といった判断が不可欠です。Quick Value™(クイックバリュー)では、こうした工程切り替えも含めて、手作業では比較が大変な見積り工数を大幅に削減できます。PP(ポリプロピレン)製部品の企画・試作・量産まで、迷ったらまずは図面をアップロードしてお気軽にご相談ください。

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