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QuickValue 樹脂加工マガジン#POMに関する記事一覧

「POM」タグが付いた記事の一覧です。樹脂加工品の設計や材料選定、成形・加工方法をわかりやすく解説する総合ガイド「樹脂加工マガジン」では、エンプラやふっ素樹脂などの材質知識から、成形・加工プロセス、法規・規格、試験方法まで、現場で役立つノウハウをお届けします。

ポリアセタール(POM)とは?物性、他素材との比較や選定基準、設計における注意点について
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ポリアセタール(POM)とは?物性、他素材との比較や選定基準、設計における注意点について

ポリアセタール(POM)は金属の代わりに「よく動く精密部品」をつくるのに強いエンジニアリングプラスチックです。優れた材料特性を有し、使いこなせば頼もしい素材であり、自動車から精密機器まで幅広く活躍しています。当記事では主に設計者の方向けに、物性、加工性、用途、類似材料との比較、選定の判断基準、設計上の注意点をまとめました。ポリアセタール(POM)はホルムアルデヒドを重合して得られる、結晶性のエンジニアリングプラスチック(熱可塑性樹脂)です。高い機械的強度と剛性、低い摩擦係数、そして優れた寸法安定性を持ち、バランスの良い特性を示します。ポリアセタール(POM)樹脂には主にホモポリマー(代表製品例:デュポン社のデルリン®)とコポリマー(代表製品例:ポリプラスチックス社のジュラコン®)の2種類があり、ホモポリマーは機械的強度・硬度に優れ、コポリマーは耐熱・耐加水分解性に優れるなどの違いがあります。1960年にデュポン社が世界初のポリアセタール(POM)樹脂(デルリン®)を実用化して以来、自動車・産業機器・電子部品・日用品など幅広い分野で使用されています。ポリアセタール(POM)は次のような性質を持ちます。詳細も解説していきます。高い機械的強度と剛性(引張強度・硬度・弾性率が高い)および繰り返し荷重への強さ(高疲労寿命、クリープ変形しにくい)優れた耐摩耗性と低摩擦係数(自己潤滑性があり、摺動部品に最適)低い熱膨張係数と高い寸法安定性(熱変形・吸湿による寸法変化が小さい)低吸水性(吸湿率が極めて小さく、水や湿度環境でも寸法や特性に影響が出にくい)ポリアセタール(POM)は機械的強度が高く剛性(剛さ)に優れ、繰り返し荷重にも耐える疲労強度や長期使用時のクリープ耐性(経時変形しにくさ)も非常に高い材料です。未強化グレードでも引張強度は約60~70MPaに達し(ナイロンやポリカーボネートと同等以上)、高い表面硬度と弾性率(剛性)を示します。衝撃強度(靱性)も良好で、特に低温下(-40℃付近)でも粘り強さを保ち衝撃に対して脆くなりにくい点は重要な利点です。一方で使用温度上限は比較的低く、連続使用温度はおよそ80~100℃程度が目安で、約100℃を超える高温環境では機械特性が低下します。耐熱性を向上させたグレードでも短時間で130~140℃程度が限界であり、一般的なポリカーボネートのような高耐熱樹脂には及びません。耐摩耗性・摺動特性(摺動:しょうどう、すべりやすさのこと)に優れる点もポリアセタール(POM)の大きな特徴です。結晶性樹脂であるポリアセタール(POM)は表面が硬く摩擦係数が低いため、自己潤滑性を示して潤滑剤なしでもスムーズな摺動が可能です。実際、ポリアセタール(POM)製ギアやカム、ベアリングなどは長期間使用しても摩耗粉の発生が少なく、潤滑油との相性も良好です。さらに寸法安定性が極めて高く、成形後の寸法変化や熱による膨張収縮が小さいため、精密部品に適しています。特に吸水率の低さに起因して、環境湿度による寸法変化がほとんどない点で、吸水による膨張・強度低下が起こりやすいナイロンなどと大きく異なります。実測で24時間吸水率は0.2%前後、飽和吸水率でも0.9%程度に過ぎず、ポリアセタール(POM)は水中や高湿環境下でも形状・寸法を安定に保つことができます。耐薬品性では、ガソリンやエンジンオイル、アルコール類、ベンゼンなど多くの有機溶剤や油剤に侵されにくく良好な耐性を示します。ポリアセタール(POM)は、中性の化学薬品や燃料には強く、電子部品や燃料系部品として用いても膨潤や劣化が少ないことが確認されています。ポリアセタール(POM)は電気的にも絶縁性が高く、体積抵抗率が1015-17 Ω・cmと良好な絶縁材料です。燃焼性は自己消火性は無く可燃性(UL94 HB相当)ですが、燃焼時にも腐食性のハロゲンガスなどは発生しません。ポリアセタール(POM)には留意すべき弱点も存在します。高温下での安定性が限定的で、130℃を超えるような環境では熱劣化(分解)が生じやすいため耐熱設計に限界があります。また強酸や強塩基などの苛性薬品には侵されやすく、濃硫酸・濃硝酸や高濃度アルカリ溶液中での使用は不適です。屋外で紫外線に曝される環境下では耐候性(耐紫外線性)が低いため、無添加のポリアセタール(POM)は日光に長期間晒すと変色・劣化(脆化)を起こします。必要に応じて後述するUV安定化グレードを使用するか、塗装や遮光カバーで保護する対策が推奨されます。また燃焼しやすい素材でもあるため(酸素指数が低く自己消火性無し)、防火性が求められる用途では難燃グレードの検討も必要な場合があります。ポリアセタール(POM)は成形加工のしやすさと仕上がり精度の両面でも優れており、量産成形から試作・加工まで幅広い製造プロセスに対応可能な材料です。ポリアセタール(POM)は射出成形を主体とした加工が容易で、生産性の高い材料です。ポリアセタール(POM)樹脂ペレットは融点が175〜180℃程度と比較的低く、通常シリンダー温度190〜210℃付近で溶融して射出できます。金型温度は60〜80℃程度が推奨され、特に高い寸法精度が要求される成形では、高め(100℃前後)の金型温度を用いることで、結晶化度を安定させ成形収縮を抑制します。ポリアセタール(POM)は結晶性樹脂ゆえに成形収縮率が大きめで(約1.5~2.5%)、成形品寸法のバラツキに注意が必要です。金型設計時には適切な収縮補正を行い、射出後の寸法変化(後収縮)も考慮することが求められます。射出成形時の取り扱いでは、熱劣化に注意が必要です。ポリアセタール(POM)は過度に高温(約220℃以上)で加熱されたりシリンダー内で長時間滞留したりすると分解が始まり、ホルムアルデヒドガスなどの有毒な分解生成物が発生します。このガスは刺激臭が強く、金型腐食や作業者の健康被害を引き起こす恐れがあるため、射出成形機のシリンダーは密閉型で換気設備を整え、設定温度と滞留時間を厳守することが肝要です。ポリアセタール(POM)は切削加工(機械加工)にも適した材料です。押出成形により製造されたポリアセタール(POM)の丸棒材や板材、チューブ材などの押出材ストック形状が市販されており、これらを旋盤・フライス盤・ボール盤などで削り出して精密部品を作ることができます。ポリアセタール(POM)は高い剛性と硬質な表面を持つため切削時にバリが出にくく、比較的自在に穴あけやねじ切り加工も行えます。熱伝導率が低く加工時に発熱しやすい点には留意が必要ですが、適切な切削条件と工具を用いれば良好な仕上げ面が得られます。他の軟質樹脂に比べて寸法精度を高く仕上げやすいことから、金型加工が難しい少量多品種部品や大型部品にも、ポリアセタール(POM)の切削加工が利用されています。実際に、工作機械や自動機器用のカムや歯車、治具部品などはポリアセタール(POM)素材から削り出されるケースも多くあります。また射出成形品の二次加工(例えばボス穴の追加や表面フライス加工)においても、ポリアセタール(POM)は割れやカケが生じにくく加工しやすい素材です。ポリアセタール(POM)は上記の特性から、機械的強度や精密さが要求される可動部品を中心に幅広い用途で活躍しています。特に以下の表の産業分野・用途で主材料として使用されています。設計材料の選定においては、ポリアセタール(POM)と他のエンジニアリングプラスチック(ナイロン系樹脂やポリカーボネートなど)との特性差を理解することが重要です。以下に主要な比較ポイントを示します。ここでは、ポリアセタール(POM)とナイロンの特性の違いについて解説します。ポリアセタール(POM)は吸水による寸法変化が極めて小さく、長期使用でも寸法精度を維持しやすいのに対し、ナイロンは吸湿しやすく環境湿度で数%程度膨張・収縮し寸法精度に影響します。したがって、高湿度下でクリアランスが重要な部品にはポリアセタール(POM)が有利です。ポリアセタール(POM)はナイロンより引張強度・表面硬度・弾性率がやや高く、荷重に対して変形しにくい傾向があります。一方で、靱性(ねばり強さ)や延性ではナイロンの方が上回り、衝撃荷重や変形を伴う用途ではナイロンが割れにくく適応範囲が広い場合があります。両者とも低摩擦で摺動部品に用いられますが、一般的にポリアセタール(POM)の方が摩擦係数が低く自己潤滑性に優れるため、金属相手のギアなどではポリアセタール(POM)がよりスムーズな動作を示す場合があります。ナイロンは油やグリース、弱酸・弱塩基には強くガソリン中でも比較的安定です。一方で、ポリアセタール(POM)は強アルカリや強酸に弱いものの、ガソリンや有機溶媒耐性では大差なく両者とも良好です。ナイロンはフェノール系や高温の酸に弱く、ポリアセタール(POM)はアルカリに弱いなど相違点があるため、接触する化学物質に応じた選定が必要です。ここでは、ポリアセタール(POM)とPCの特性の違いについて解説します。ポリアセタール(POM)は引張強度や曲げ強度、硬さでPCを上回る傾向があり、特に弾性率(剛性)はポリアセタール(POM)が約3GPa前後、PCは2.4GPa程度でポリアセタール(POM)の方が硬い材料です。したがって、高い剛性や耐荷重性が要求される部品ではポリアセタール(POM)が有利です。ポリカーボネートの特筆すべき特性は極めて高い衝撃強度であり、他のプラスチックを圧倒する耐衝撃性を示します。一方で、ポリアセタール(POM)は高剛性ゆえに衝撃に対して脆性が相対的に高く、PCほどの粘りはありません。衝撃や落下に晒される用途(ヘルメットや透明カバー等)ではPCが適しています。PCはガラス転移温度(硬いガラス状態から柔らかいゴム状態へ変化する温度)が150℃程度と高く、120℃前後の高温下でも機械的性質を保持します。ポリアセタール(POM)の連続使用温度が80〜100℃であるのに対し、連続使用可能ではPCの方が勝ります。したがって、高温雰囲気中や耐熱部品にはPCの方が最適です。PCも吸水率は低く(約0.15%/24h)寸法安定な樹脂ですが、ポリアセタール(POM)の方がさらに吸水性が低く湿度の影響を受けにくいです。両者ともナイロンに比べれば寸法変化は小さいため、高湿度環境下での寸法精度という点では大きな差はありません。ポリアセタール(POM)は機械加工性や摺動用途適性で優れ、PCは透明性や耐衝撃性で優れます。PCは透明樹脂として光学用途にも使えますが、ポリアセタール(POM)は不透明(白色または着色)です。それぞれの特性に応じて「強度・精度重視ならポリアセタール(POM)、耐衝撃・耐熱や透明性重視ならPC」といった使い分けがされています。ここでは、ポリアセタール(POM)と超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)の特性の違いについて解説します。超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)の密度は0.94g/cm³と軽量であるのに対し、ポリアセタール(POM)は約1.4g/cm³と重く、同体積でもUHMW-PEの方が約1/3軽量です。重量制限がある移動部品や大面積のライナー部品では、UHMW-PEの軽量性が大きなメリットとなります。ポリアセタール(POM)の引張強さは約60~70MPa、曲げ弾性率は約3GPaと高剛性を示すのに対し、UHMW-PEは引張強さ約38MPa、弾性率約0.5GPaと大幅に低い値を示します。構造部品や精密部品では荷重に対する変形抑制が重要なため、POMが適しています。UHMW-PEは非常に高い耐衝撃性と延性を持つ素材です。UHMW-PE のアイゾット衝撃値が「破断せず」に近い高い値を示す代表例として挙げられており、ポリアセタール(POM)や他の硬質プラスチックよりも耐衝撃性がずっと高いことが示されています。また、UHMW-PE は非常に高い破断伸びを持つことが一般的に言われており、ポリアセタール(POM)のような比較的脆い樹脂(破断伸びが低めの材料)とは大きな差があります。摩擦係数ではUHMW-PEが0.1前後と極めて低く、ポリアセタール(POM)の0.2〜0.3を下回ります。また耐摩耗性もUHMW-PEが炭素鋼の15倍という優れた特性を示し、自己潤滑性が高いため潤滑油不要の用途に最適です。コンベアライナーやスライドガイドなど、連続摺動や大きな摩擦力が作用する部品ではUHMW-PEが有利です。ポリアセタール(POM)の吸水率は24時間で約0.2%と元々低い値ですが、UHMW-PEはほぼ0とさらに小さく、湿度や水分の影響をほとんど受けません。高湿度環境や水中での寸法安定性を重視する場合は、UHMW-PEが優れています。連続使用温度はポリアセタール(POM)が80〜100℃、UHMW-PEが約80℃とPOMがわずかに高温まで耐えます。また線膨張率もPOMの方が小さく、温度変化に対する寸法安定性ではPOMが勝ります。ただし、どちらも100℃未満が実用範囲であり、高温用途では限界があります。次に「その部品に本当にポリアセタール(POM)を使うべきか?」を判断するための材料選定基準について整理します。ポリアセタール(POM)は優れた材料ですが万能ではないため、用途によっては他の樹脂や金属の方が適切な場合もあります。ここでは、ポリアセタール(POM)が最適な用途・条件について解説します。ポリアセタール(POM)は吸水率が低く、湿度変化による寸法変化が小さいという特長があります。この特性により、高湿度環境や水回り、濡れた環境で精密な寸法精度が要求される部品に適しています。たとえば、ギヤポンプ内部のギヤのように、水や液体との接触がある摺動部品では、ポリアセタール(POM)の低吸水性が寸法安定性の維持に大きく寄与します。ポリアセタール(POM)は成形後の収縮が安定しており、収束も早いため、長期間にわたって図面寸法を保ちやすい材料です。結晶性樹脂特有の成形収縮はありますが、その挙動が予測しやすく一定であるため、適切な金型設計により高精度な成形品を得ることができます。このため、厳しい公差管理が求められる精密機械部品や計測機器部品などで重宝されています。ポリアセタール(POM)は樹脂の中でも特に低い摩擦係数を持ち、スムーズな摺動特性を発揮します。この特性は小型・精密ギヤや軸受け部品、カム機構などで多く採用されている理由でもあります。ポリアセタール(POM)の自己潤滑性は、潤滑剤の使用が制限される用途で大きな価値を発揮します。食品機械や医療機器、電子機器内部など、油脂類の使用が好ましくない環境でも、無給油での摺動運転が可能です。ポリアセタール(POM)の比重は約1.4と軽量であり、金属部品からの置き換えにより大幅な軽量化が可能です。また、射出成形による一体成形により、従来の金属加工では必要だった複数部品の組み立てを単一部品化できる場合があります。強度面では引張強さ約60MPa級、剛性面ではヤング率約3GPa程度の特性を持ち、特に、設計上でリブや肉付けなどの工夫により必要強度を満たせる場合に有効です。ここでは、ポリアセタール(POM)が不向きな用途・条件について解説します。ポリアセタール(POM)は80~100℃での連続使用など高温環境では性能が低下し、防炎要求がある場合にも不利となります。難燃グレードも存在しますが、難燃剤の添加により機械特性が低下する傾向があるため、高温と難燃の両方が要求される用途では他材料の検討が必要です。衝撃荷重や大きな弾性変形がかかる用途、極端な高荷重摺動条件では、ポリアセタール(POM)は適さない場合があります。このような用途では、より高い靭性を持つナイロン系樹脂や、金属材料と潤滑剤の組み合わせが有利となることがあります。ポリアセタール(POM)は強酸・強アルカリに対する耐性が限定的であり、これらの化学物質に接触する用途では対応が困難です。このような環境では、より高い耐薬品性を持つPPS、PVDFなどのエンジニアリングプラスチックの検討が必要となります。ポリアセタール(POM)は紫外線に対する耐性が低く、そのままでは屋外での長期使用に不向きです。屋外用途では耐候グレードの採用か、他の耐候性に優れた材料の検討が必要となります。変形許容値が極めて厳しい超精密部品や、極薄肉で樹脂の変形が問題となる用途では、ポリアセタール(POM)でも対応が困難な場合があります。このような場合は、金属材料や他の高剛性材料の検討が必要です。ポリアセタール(POM)部品の設計段階で注意すべきポイントを解説します。設計者はポリアセタール(POM)の「収縮する・たわむ・膨張する」といった性質を念頭に置き、十分な遊びと安全率を持った設計を心がけましょう。ポリアセタール(POM)はエンプラ中では耐クリープ性が高い部類ですが、それでも長期間一定荷重がかかれば徐々にたわみ・変形(クリープ)が進行します。たとえば高温環境下で荷重を支え続ける構造では、初期剛性だけでなく時間経過による変形を見込んだ設計が必要です。樹脂材料は短時間の強度指標(HDTや引張強度)が良好でも、長期荷重下での形状保持性能は必ずしも比例しません。設計者は使用期間と荷重条件を考慮し、過大なたわみが問題となる場合はリブで補強する、金属補強板を組み込む、または材料自体をよりクリープに強いグレード(例:ガラス繊維強化ポリアセタール(POM))に変更する判断が求められます。繰り返し荷重がかかる部品(歯車の歯先応力、ばね部、スナップフィットの爪など)では、ポリアセタール(POM)の高い耐疲労性が有利に働きます。しかし、応力集中には依然注意が必要です。設計上、コーナーや穴部には十分なフィレット(R)を設け、急激な断面変化を避けて応力を分散させます。実用上、ポリアセタール(POM)製歯車は金属製に比べ静音・自己潤滑などメリットがありますが、歯元に過大な応力集中があると疲労亀裂が生じうるため、歯形係数の見直しやバックラッシ(遊びとしての隙間)確保などで無理のない負荷設計とすることが重要です。ポリアセタール(POM)部品に雄ねじ・雌ねじを直接切ることも可能ですが、繰り返しの分解組立や高い締結力が要求される箇所では金属インサートもしくはヘリサートの併用が推奨されます。インサートは下穴に押し込む方式で強度向上を図りますが、応力集中により樹脂が割れるリスクがあります。一方、ヘリサートは既存のネジ切りに金属バネ(コイル)を挿入する方式で、螺旋構造により応力を分散させ、樹脂への負荷を軽減できます。セルフタッピンねじを樹脂に締結する場合、雌ねじ部はボス径・肉厚を十分にとり、締結時に樹脂がクリープ変形しても締付力を維持できる設計とします。間隔の狭い複数ねじ締結では、熱膨張や収縮による応力で割れが生じやすいため注意が必要です。組立後に温度が低下すると樹脂が収縮し、金属ねじに引っ張られてクラックが入るケースもあります。対策としてボス部にリブで補強を入れる、ねじ寸法公差を緩めに設定する、あるいはクリアランスホールを設けるなどでストレスを緩和します。樹脂は金属に比べ熱膨張係数が大きく、温度変化によるクリアランス変動が大きい点に注意します。たとえばシャフトと軸受けをポリアセタール(POM)で作る場合、常温では適正でも高温になるとクリアランスゼロとなり焼き付き・かじりの原因になる可能性があります。設計時に使用環境の温度範囲を想定し、その範囲内で嵌合が機能するようクリアランスを設定します。摺動部や嵌合部では最悪条件で片側ゼロクリアランス~若干のすきまが残るようにし、必要に応じてスリットや逃げを設けて熱膨張を吸収する設計が有効です。逆にはめあいが緩すぎると、ガタや異音につながるため、実績値に基づいた適正公差を設定します。また、プラスチックは弾性率が低く加工中のたわみも発生しやすいため、公差は「必要以上に厳しくしすぎない」こともポイントです。どうしても厳しい精度が必要な部分(軸受けの内径など)は金属ブッシュを埋め込むなどして対応すると、安定した寸法を確保できます。ポリアセタール(POM)は弾性限界が大きく弾性回復率が高いため、クリップや係止爪、板バネなどのスナップフィット構造によく利用されます。設計時は許容ひずみ量内で変形するように肉厚・幅・長さを設定し、角部には必ず十分なRを付けて割れを防ぎます。一般にポリアセタール(POM)は0.5~1.0%程度のひずみまでは繰り返しに耐えると言われますので、爪の変位量から応力解析や計算で安全を確認します。また組立時の挿入角度やリード部形状を工夫し、無理な力でこじらなくてもスムーズに嵌合するよう配慮します。スナップフィットの受け側(穴や溝)にも適切な面取りをつけ、組立時の樹脂カケ(欠け)を防止します。ポリアセタール(POM)は潤滑なしで使えるとはいえ、設計段階で摩耗軽減策を講じるとさらに信頼性が上がります。たとえば、摺動する相手側の材質選定や表面仕上げを適切にし(ポリアセタール(POM)同士の摺動や、ポリアセタール(POM)と軟質樹脂の組み合わせより、ポリアセタール(POM)対金属やポリアセタール(POM)対硬質樹脂の方が摩耗粉が出にくい傾向があります)、接触面圧が高すぎないよう当たり面積を十分取る設計とします。摺動面に丸みやテクスチャを持たせて初期摩耗粉を逃がす工夫や、必要に応じて肉厚部に小さな潤滑溝を設けることもあります。また、高速・高荷重で連続摺動する部分では摩擦熱で樹脂温度が上昇し劣化や寸法変化を招く恐れがあるため、冷却構造(通風路やヒートシンク)を検討したり、定期メンテナンス計画を立てて早めの交換を行うことが望ましいです。なお、どうしても潤滑剤を使えない環境(食品機械やクリーンルーム機器など)ではポリアセタール(POM)の自己潤滑性が大いに有効ですが、この場合も摺動面の仕上げ精度を上げ(鏡面や低粗さ仕上げ)、初期摩耗を減らす配慮をします。樹脂部品は時間経過による寸法変化(成形直後から数時間~数日での寸法収縮や、使用中のクリープ変形)も考慮しなければなりません。重要寸法は成形後の安定化時間を見込んだ上で検査する、クリープでたわむ箇所は初期寸法を意図的に補正しておく(クリープ後にちょうど狙い寸法になるように)などの対策も取られます。また、必要以上に厳しい公差は避け、樹脂特有の弾性変形や環境変化を吸収できる緩やかな許容範囲を設定するのがポイントです。ポリアセタール(POM)は、高剛性・低摩擦・寸法安定性を兼ね備えたバランスの良いエンジニアリングプラスチックです。精密機構部品や金属代替用途において高い設計自由度を発揮しますが、熱・薬品・衝撃などの弱点も理解した上で最適な設計が求められます。寸法安定性を活かす:低吸水性により湿度変化でも高精度を維持。高精度部品や摺動機構に最適応力集中を避ける設計:R付けや補強で疲労・割れを防ぎ、長期耐久性を確保熱膨張とクリープを考慮:温度変化や長期荷重を見越し、十分なクリアランスと安全率を確保摩耗・潤滑対策:相手材や接触面設計を工夫し、自己潤滑性を最大限に活かすポリアセタール(POM)は、強度・精度・摺動性を同時に求める設計者にとって極めて実用的な素材です。適切な材料選定と設計配慮を行えば、金属代替や軽量化、コスト削減を実現しつつ、高信頼性の機構設計を可能にします。高精度かつ低摩擦なポリアセタール(POM)部品は、寸法公差や摺動特性が重要な設計で多く採用されています。こうした精密部品の加工コストや納期をすぐに把握したい方には、バルカーの即時見積もりサービス「Quick Value™(クイックバリュー)」が最適です。Quick Value™は、当社バルカーが提供する樹脂加工品専用のデジタル調達サービスで、2D図面や3D CADデータをクラウドにアップロードするだけで、AIが自動的に加工内容を解析し、最適な価格・納期を原則2時間以内に算出します。特にポリアセタール(POM)のような精密切削部品や摺動機構部品では、形状や公差条件によって加工コストが大きく変動します。Quick Value™は提携する多数の加工パートナーの設備・工法・負荷状況をAIが照合することで、図面ごとに最適な工場を即座に選定。試作から量産まで、最短ルートで見積と発注が完了します。従来のように複数の加工会社へ見積を依頼し、原価を手計算する必要はありません。ポリアセタール(POM)をはじめとするエンジニアリングプラスチック部品の調達プロセスを効率化し、設計から生産立ち上げまでのリードタイム短縮を実現します。

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