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QuickValue 樹脂加工マガジン#PTFEに関する記事一覧

「PTFE」タグが付いた記事の一覧です。樹脂加工品の設計や材料選定、成形・加工方法をわかりやすく解説する総合ガイド「樹脂加工マガジン」では、エンプラやふっ素樹脂などの材質知識から、成形・加工プロセス、法規・規格、試験方法まで、現場で役立つノウハウをお届けします。

高精度なPTFE(テフロン)切削加工のポイントと加工事例
成形・加工プロセス

高精度なPTFE(テフロン)切削加工のポイントと加工事例

優れた耐熱性・耐薬品性・非粘着性など、さまざまな性質によってますます評価が高まっているPTFE。しかし、「どのような素材か? / どのような加工方法で作られるか? / 調達するうえで注意すべきことは?」といった疑問を持たれている方が少なくありません。そこで今回は、PTFEを知るファーストステップとして、バルカーの高機能樹脂担当スタッフが特性や活用方法をわかりやすく解説します。ふっ素樹脂とはふっ素原子を含む合成樹脂の総称です。PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)はその1材質です。ふっ素樹脂全需要の約60%を占めるほど代表的な材質であり、切削加工品においてもっともポピュラーな材質といえます。PTFEは以下のような特性を備えており、その特性ゆえに他の素材では困難な状況でも活用されています。PTFEはどのような薬品にも反応しない化学的特性を備えているため、近年、特に半導体製造現場の需要が飛躍的に伸びています。半導体の製造において、ウェハ上にパターン回路をつくる工程は化学処理(洗浄処理など)で行われ、目的に応じて強酸や強アルカリ、溶剤といった多数の薬液を使用します。薬液に微量でも不純物が混入するとウェハ上の微細な回路パターン形成の障害となり、不良品が発生します。このようなトラブルを避けるために、薬液を貯蔵するタンクや配管、ポンプやバルブの内側や薬液が接触する部分などにPTFEが内張りライニングされています。PTFEは連続使用で260度、一時的であれば300度の熱に触れても分解しません。これほどの耐熱性があるふっ素樹脂はPTFEだけです。そのため、パンを焼く工程のベルトコンベアーなどの高温の環境で活用されています。粘着物がつきにくい性質があります。この特性と耐熱性から、フライパンや炊飯器の釜のコーティングなどに活用されています。高温で調理しても破損せず、お米や具材がこびりつくこともありません。PTFEは樹脂の中でもっとも摩擦係数が低く、潤滑性が高い材質です。その特性を利用してモーターなどで回転する軸部分に使われています。一般的に、このような機能はベアリングが担いますが、「複雑な構造にしたくない」「潤滑のためのオイルを使用したくない」といったニーズにPTFEは応えます。誘電率が高く、送電ロスがほとんどないため、ミリ波レーダーの基盤材料などに使われています。一方で、絶縁材料としても優れ、高電圧の電気を遮断することができるので、充電設備や発電所でも活用されています。紫外線の影響をほとんど受けないため、何十年太陽光を浴び続けても劣化しません。そのため、屋外の貯蔵タンクの液漏れ防止用のシール材などに活用されています。一般的に、樹脂を同じ形状に大量に加工する際は、金型を作り、樹脂を溶かして流し込み、冷却して固めて取り出すという射出成形(インジェクション成形)という方法が採用されます。しかしPTFEは溶融粘度が高く、他の樹脂のように加熱しても液体化しないため、この方法は適していません。原料のパウダーをブロックや丸棒形状に圧縮成形して焼き固め、これらを機械で削り出す切削加工という方法で目的の形状にしていきます。この切削加工には、大きくわけて2種類の方法があります。素材が固定され、工具(刃物)が回転して素材を削っていく方法で、主にブロックや板物形状に適しています。縦に動くZ方向、横に動くX方向、奥行きに動くY方向の3軸に動かすことができ、必要な工具が自動で交換されます。フライスや中ぐり、穴あけといった切削を事前にプログラムで設定し、図面どおりの形状にしていきます。3軸にテーブルの回転の2軸を加えた5軸加工機もあります。3軸では難しい湾曲を描くような複雑な形状を切削でき、人手で位置を変える必要がないので生産効率も上がるという点で注目されています。陶芸のろくろのように、素材が回転して工具(刃物)を当てることで削っていく方法で、主に円や筒形状の加工に適しています。通常、コンピュータで数字を制御できる装置を備えているNumerical Control(数値制御)旋盤という機械を使用します。このNC旋盤にマシニング加工のような回転工具を備えつけ、フライスや穴あけができるようにしたものを複合旋盤といいます。複合旋盤であれば、5軸加工機のような作業効率と品質の向上が図れます。バルカーはPTFEを中心に、約70年間ふっ素樹脂加工品を供給してきました。その間、お客様のさまざまな課題やお悩み、ニーズと向き合ってきました。現在は以下のような声を聞くことが多くなっています。新しくPTFEの加工を依頼する、あるいは現在の調達状況に難があるために新しいサプライヤーを探さなくてはならなくなったとき、品質の監査のために工場の加工現場を視察したり、サンプルを作って出来栄えを見る、といったプロセスが必要な場合がある。そのための時間や労力の負担が大きい。サプライヤーを選定した後、見積りを取るために図面を送ったり、工場や担当者と連絡を取る必要がある。そのための時間や労力の負担が大きい。さらに相見積りを取る場合、その負担はサプライヤーの数に比例して増える。現在、半導体市場が活況を呈していて、自然と調達量の多いメーカーに、より多くのPTFEを占有される場合がある。そうなると必要な量や使用頻度がそれほど高くないユーザーが容易に入手できなくなる状況になりやすい。高性能で用途も広いPTFEですが、扱うにあたっていくつかの注意点もあります。ここではそのなかで特に注目していただきたいポイントを挙げます。PTFEは線膨張(温度が変化することによって物質の大きさが変化すること)が大きい樹脂です。低温時に収縮し、高温時に膨張します。23℃あたりに体積が変わる転移点があり、ここを上下することで1〜2%増減します。そのため、お客様が使用される環境温度が低いと加工品が「装置に合わない」、高いと「装置に入らない」といった不具合が生じる可能性があります。バルカーでは検査時の温度を25℃±2℃で規定しています。PTFEを使用される環境は同様の温度に設定いただくことをお願いしています。「どのくらいの温度で、どれほど変化するか」は、線膨張係数というデータをQuick Value™のホームページに掲載しておりますので、設計の際はぜひ参考にしてください。PTFEは摩耗しやすい材質で他のパーツとのこすれが生じたり、常に摺動している環境で使用しているとPTFEは摩耗やクリープ(変形)が生じやすくなります。不具合が発生する前にチェックして交換する必要があります。また、このような環境下で使用する際は、グラスファイバーやカーボンなどをPTFEに混ぜて摩耗強度を高めることもできます。バルカーでは「充てん材入りPTFE」のご注文に対応しています。工程としては、お客様から充填材とその混合量を指定いただくパターンと「こういう用途で使いたい」というご相談から、バルカーが設計内容を提案。試作品をお客様の実機で確認いただいた上で生産するというパターンがあります。Quick Value™は、WEB上でPTFEの切削加工品の見積りの取得から、発注・調達までできるサービスです。これまで人を介して行われてきた作業をDXで実現。圧倒的なスピードと利便性でものづくりの現場に貢献します。バルカーはPTFEを中心に、約70年間ふっ素樹脂加工品を供給してきました。その実績に裏打ちされた基準をQuick Value™に参画しているサプライヤーにも求め、徹底した品質管理を行なっています。さらに、さまざまな強みを持つサプライヤーがいることで多様な技術力を発揮。メーターサイズの加工品や溶接を含む複雑な形状のオーダーにも幅広く対応しているので、ぜひご活用ください。

PTFEとは?高機能樹脂バルフロン®の特性や用途、調達法など徹底解説
材質

PTFEとは?高機能樹脂バルフロン®の特性や用途、調達法など徹底解説

耐熱性や非粘着性、電気絶縁性など、優れた特性によってさまざまな現場で不可欠とされる高性能樹脂PTFE。しかし、私たちの暮らしや産業にどれほど深く関わっているかを意識したことがある人は少ないのではないでしょうか。本記事では、当社バルカーの高機能樹脂担当スタッフがPTFEの基礎知識から応用例、調達方法に至るまで徹底解説します。創業以来70年以上に渡って積み上げてきた確かな技術と知見をもとに、信頼性の高い情報をお届けしますので、ぜひ参考にしてください。PTFEはスーパーエンプラの中でも優れた特性を持つ材料です。この章では、PTFEの歴史から基本構造や特性、そして他のスーパーエンプラとの違いについて解説します。PTFEは炭素とふっ素からなるスーパーエンプラの一種で、その正式名称は「ポリテトラフルオロエチレン(Poly Tetra Fluoro Etylene)」です。耐熱性や耐薬品性など、多彩な特性を備えたこの材質は、1938年に米国デュポン社のプランケット博士による冷媒研究の過程で偶然発見されました。博士はテトラフルオロエチレン(TFE)ガスを圧力容器に保存していた際、ガスが重合して白い粉末が生成されていることに気付きました。この粉末がPTFEです。その後、デュポン社は1947年に「テフロン®」の商標でPTFEを市販化し、日本では1952年にバルカーが「バルフロン®」として製品化。家庭用品から先端産業まで、現在に至るまで幅広い分野で活用されています。PTFEの優れた特性は、その独特の化学構造によって支えられています。PTFEは炭素原子が直線状に結合した炭素鎖を、ふっ素原子が完全に覆う構造をしています。この分子構造は非常に安定しており、特性の源泉となっています。具体的には、炭素-ふっ素結合(C-F)の結合エネルギーが非常に強いため、260℃の高温下でも分解や変性が起こりにくい耐熱性を発揮します。また、ふっ素原子が化学反応を防ぐ働きを持つことで、強酸や強アルカリにも侵されない高い耐薬品性を示します。さらに分子表面の滑らかさにより、物質が付着しにくい非粘着性が得られます。このようにPTFEは、化学構造から生まれる特性により、工業用途でも日常用品でもその性能を発揮します。PTFEはその独特な化学構造と特性を実現するために、精密な化学反応とプロセス管理を経て製造されます。PTFEは蛍石(フルオライト)を原材料として製造します。蛍石を硫酸と反応させてフッ酸を生成し、これをクロロホルムと反応させることでモノクロルジフルオロメタンを得ます。このモノクロルジフルオロメタンを熱分解することで、テトラフルオロエチレン(TFE)が生成されます。TFEはPTFEの基本構成要素であり、この段階の化学反応は、高い安定性を持つPTFEの特性を形作る基盤となります。TFEをPTFEへと変化させる重合工程には、主に2つの方法が採用されています。1つは懸濁重合で、水とTFEガスを耐圧容器内で反応させ、直径数mmの粉末を生成する方法です。この粉末はさらに微粉化され、モールディングパウダーとして使用されます。もう一つは乳化重合で、ふっ素系界面活性剤を使用し、微細なPTFE粒子を生成します。この粒子は乾燥・凝析の工程を経てファインパウダーやディスパージョン液として利用され、用途に応じて多彩な形態で活用されています。PTFEはスーパーエンプラの中でも、特に耐熱性・非粘着性・耐薬品性において優れています。たとえば連続使用温度が260℃に達するPTFEは、PPSやPEEKなど、他のスーパーエンプラでは対応できない過酷な温度環境で使用可能です。また、その滑らかな分子表面による非粘着性は、食品加工やフライパンのコーティングに最適です。さらに、PTFEはほとんどの化学薬品に耐性を持ち、極めて過酷な化学環境でも性能を維持します。一方で、PEEKは機械的強度が高いものの、耐薬品性には限界があり、PPSはコストパフォーマンスで優れる反面、PTFEほどの非粘着性を持っていません。これにより、PTFEは特定の用途や環境において、他のスーパーエンプラを凌駕する選択肢となっています。PTFEは、耐熱性や耐薬品性をはじめとする多くのメリットを持つ一方で、使用時に留意すべきデメリットも存在します。この章では、PTFEの特徴における長所と短所について具体的に解説します。PTFEには、以下のような長所が挙げられます。260℃まで使用可能な高い耐熱性ほとんどの薬品に対して安定した耐薬品性物質が付着しにくい非粘着性滑りが良い低摩擦特性広範囲の周波数で安定した電気絶縁性長期間の紫外線や環境劣化に強い耐候性ほぼ不燃性であり、安全性が高い難燃性撥水・撥油に最適な表面特性PTFEの耐熱性は非常に優れており、260℃という高温下でも安定した性能を発揮します。この特性は、製造現場の高温環境や調理器具のコーティング材として重宝されています。また、ほとんどの酸やアルカリに侵されない耐薬品性を持ち、化学薬品を扱う製造現場において欠かせない素材です。さらに、PTFEは非粘着性も有しており、物質が表面に付着しにくいため、フライパンや食品加工設備で広く利用されています。同様に、極めて低い摩擦係数を持つため、潤滑剤なしでも滑りが良く、製造機械の回転部品などで高い効率を発揮します。電気絶縁性の高さもPTFEの特徴のひとつであり、広い周波数や温度領域で安定しているため、電子機器の絶縁材料として使用されます。この他にも、紫外線や環境劣化に対する耐候性が高く、屋外での長期使用にも適しています。また、難燃性や低吸水性により、安全性や耐久性を求められる用途でも優れた性能を示します。PTFEには、以下のような短所が挙げられます。温度変化による寸法変化(線膨張が大きい)が起きる内部残存応力による変形(加工後の変形)が生じやすい外部応力による変形(高荷重時のクリープ)が起きる静電気を帯びやすく、適切な対策が必要PTFEは温度変化による線膨張が大きい点がデメリットです。たとえば、常温で寸法通りの部品が高温環境下で膨張し、仕様が合わなくなる場合があります。具体的には、25℃でΦ30 × 1,000(mm)の丸棒は、100℃の環境下で約1,010(mm)に膨張し、0℃では約995(mm)に収縮します。特に、23℃にはガラス転移点(Tg)があり、この領域をまたぐと寸法変化が大きくなります。これを防ぐためには、製品を使用する環境に合わせた設計や試験が必要です。また、PTFEの成形時に内部に残る応力(材料内部に残っているストレス)が、後の加工や使用時に変形の原因となることがあります。あらかじめアニール処理を行うことで、この問題を軽減できますが、加工コストが増加する可能性もあります。さらに、外部からの高荷重により、時間とともに変形するクリープ現象が発生します。PTFEは樹脂の中では弾力性と柔軟性が高いため、使用時に著しい荷重がかかると、時間とともに変形が進みます。クリープを抑えるためには、充填材を加えたPTFE素材を使用したり、シール材であれば厚くするなどの工夫が求められます。最後に、PTFEは静電気を帯びやすい性質を持つため、燃料や可燃性物質の近くで使用する際には注意が必要です。静電気抑制剤を混合することでこの問題を改善できますが、設計段階での考慮が不可欠です。出典:[ バルカー技術誌 / No.47 SUMMER 2024 ]PTFEの成形方法はその特性に基づき、特殊な技術が必要です。特に、PTFEは融点以上でも溶解しない性質を持つため、通常の樹脂加工法である押出成形や射出成形が使用できません。そのため、形状や用途に応じた独自の加工法が用いられています。この章では、代表的な成形方法と具体例を解説します。圧縮成形は、PTFEを成形する際に広く採用される基本的な方法です。この方法では、モールディングパウダーを金型に充填し、常温で圧縮して成形体を作成します。その後、成形体を焼成炉で加熱し、粉末を融着させます。この方法は棒材や管材、板材など切削用の素材を製造する際に最適です。化学プラントで使用されるPTFEライニング管やシート、各種の工業用シール材が圧縮成形で製造されています。ラム押出成形は、長尺のロッドやパイプを連続成形する際に用いられる手法です。金型と加熱ヒーターを組み合わせ、油圧シリンダーで押し込みながらPTFEを融着させて成形します。この方法は、防食パイプや耐薬品性の高い配管材料の製造に適しています。耐薬品性が求められる工業用配管や長尺の絶縁チューブがラム押出成形で作られています。PTFEの柔軟性と弾力性を活かした加工法として、切削加工が挙げられます。この方法では、成形された素材を機械で削り出し、特定の形状に加工します。摩擦抵抗が小さいPTFEの特性により、加工は比較的容易であり、精密な部品の製造が可能です。医療分野で使用されるカテーテル部品や自動車産業向けのシール材は、切削加工で製造されています。フィルムやシート形状に加工する場合、成形素材をかつら剥きの要領で切削する方法が一般的です。さらに薄いフィルムが必要な場合には、加熱ロールを用いて延伸加工を施します。一方で、チューブやテープシールといった特定の形状を製造する際には、ファインパウダーが利用されます。ファインパウダーの粒子はスポンジ状の多孔質構造を持ち、潰れやすく、せん断力を加えることで簡単に繊維化し変形しやすい性質があります。この特性を活かすために、押出助剤を添加して押出用の成形体を作成します。この成形体を押出成形により加工することで、チューブやテープシールといった形状を効率的に製造できます。また、ディスパージョン液はPTFE含浸ガラスクロスを製造する際に広く使用されています。ディスパージョン液にガラスクロスを含浸させ、乾燥焼成を繰り返すことで、耐薬品性や耐熱性に優れた厚みのあるコーティング材を作成することが可能です。食品加工のベルトコーティングや、半導体製造装置で使用されるPTFE含浸ガラスクロスがこの方法で作られます。PTFEは多くの優れた特性を持つ一方で、その性質から取り扱うにあたって注意が必要な点もあります。代表的な注意事項について解説するので、選定時の参考にしてください。PTFEは温度変化による寸法変化(線膨張)が大きいという特徴を持っています。この性質により、加工や使用時には温度の影響を考慮する必要があります。PTFEは金属に比べて大幅な寸法変化を示し、温度が高くなるほど膨張し、低くなるほど収縮します。そのため、特に高い寸法精度が求められる場合には慎重な対応が必要です。たとえば、PTFE製の部品が高温の環境で膨張すると、設計寸法が変化し、密閉性や部品同士の接続性に影響を与えることがあります。そのため、加工の際には荒加工後に熱処理を施して内部応力を解放する手順が推奨されます。これにより、線膨張の影響を最小限に抑えることが可能です。PTFEは耐熱性に優れていますが、350℃以上の高温環境では分解が進み、有害なガスを発生することがあります。この分解ガスにはフッ素系化合物が含まれており、それを吸入すると「ポリマーヒューム熱」と呼ばれるインフルエンザに似た症状を引き起こすことがあります。症状は軽度で後遺症が残ることは少ないものの、健康リスクを避けるための予防が重要です。350℃を超える環境で使用する際には、適切な換気設備を設置するか、密閉された環境での使用を避けるといった対策が求められます。また、加熱作業を伴う工程では、防毒マスクや作業エリアのガス検知器を利用することが推奨されます。PTFEは静電気を帯びやすい性質があり、使用環境によっては注意が必要です。特に、可燃性物質の近くでの取り扱いには十分な配慮が求められます。PTFEは電気を通しにくいため、使用中に静電気が蓄積しやすくなります。この静電気が原因でスパークが発生すると、火災や爆発のリスクが高まる可能性があります。たとえば、燃料タンクのライニングや化学プラントでの使用では、静電気の蓄積を防ぐために導電性を持つカーボンを添加したPTFEが使用されることがあります。また、静電気を放電するための接地装置を設置することで、安全性を向上させることが可能です。PTFEは荷重が長時間加わると、徐々に形状が変化する「クリープ変形」を引き起こすことがあります。この特性により、設計や運用において工夫が必要です。PTFEは弾力性と柔軟性に優れていますが、これにより長時間の荷重に耐えると形状が歪む傾向があります。特に、高温環境下ではクリープの速度がさらに速まります。たとえば、シール材やガスケットとして使用される場合、クリープ変形により密閉性が低下するリスクがあります。これを防ぐためには、充填材を混ぜたPTFEを使用するか、設計段階で厚みを増やして変形量を抑える工夫が求められます。PTFEはその優れた特性を活かして、産業から日常生活まで幅広く活用されています。この章では、主な用途を分野ごとに整理し、それぞれの具体例について詳しく解説します。半導体産業では、PTFEは次のような用途に利用されています。薬液タンクや配管の内張りポンプやバルブ部品の保護強酸や強アルカリを扱う工程の耐薬品素材半導体製造の工程では、ウエハー上に微細な回路を形成するために、強酸や強アルカリといった薬液が使用されます。この工程では、薬液が接触するタンクや配管、ポンプ、バルブの内側に高い耐薬品性を持つPTFEが使用されることで、不純物の混入を防ぎ、安定した製造環境を確保しています。PTFEはこうした用途を通じて、半導体製造の高い品質基準を支える重要な材料です。電子機器産業では、PTFEは以下の用途で活用されています。電線被覆やケーブルの絶縁電子部品の保護材電子機器の製造現場では、PTFEの高い電気絶縁性が求められます。広い温度や周波数範囲で安定した誘電正接を発揮するため、電線の被覆材料や電子部品の絶縁材として使用されています。さらに、過酷な環境下でも性能を維持できる特性から、高信頼性が必要な航空宇宙分野でも採用されています。これにより、PTFEは電気的安定性を要するすべての分野で欠かせない素材となっています。医療産業では、PTFEは以下の用途が挙げられます。人工血管やカテーテル材料生体適合性を求められる機器の部品PTFEは人体に対して反応性が極めて低いため、医療分野での利用価値が高い素材です。特に、カテーテルや人工血管など、体内に使用される医療機器の材料として広く採用されています。また、薬品耐性や非粘着性といった特性が求められる医療現場においても、PTFEはその機能性と安全性の高さが評価されています。自動車産業では、PTFEは次の用途で活用されています。ガスケット、シール、ホースの素材エンジンや排気系部品の耐久性向上PTFEは、耐久性や耐熱性、安全性が求められる自動車部品にも幅広く採用されています。エンジン周辺の高温環境にさらされる部品や、摩耗が発生しやすいガスケットやシール材などで高性能を発揮しています。また、新エネルギー車の開発に伴い、高電圧部品の絶縁材料としても注目されており、次世代の自動車製造においても重要な役割を果たしています。産業用途にとどまらず、次のような生活環境の分野でもPTFEは活躍しています。テント膜や建材衣料品グリーンハウス東京ドームのような大型テント膜では、耐候性が活かされ、長期間使用しても劣化しにくいという特徴が評価されています。また、住宅建材や衣料品では、防汚性や撥水性が役立ち、日常生活をより快適にするための素材として採用されています。さらに、グリーンハウスでは光透過性を活かしたフィルム素材として使用され、農業分野でもその特性が広く活用されています。PTFEには、用途や性能の要件に応じてさまざまなグレードや充てん材タイプが用意されています。また、バルカーではこれらの特性を活かした幅広い商品ラインナップを展開しており、多くの産業で活用されています。この章では、PTFEの主要なグレードと当社の提供するバルフロン®の商品ラインナップおよび制作事例についてご紹介します。より詳細な商品ラインナップをご希望の方はバルカー製品情報をご確認ください。PTFEはその優れた特性をさらに引き出すために、標準タイプから充填材を加えた特殊グレードまで、さまざまなタイプが展開されています。それぞれの特徴と用途について詳しく解説します。標準および変性グレードは、PTFE本来の特性を活かした汎用性の高いタイプです。耐熱性や耐薬品性、非粘着性のバランスに優れ、さまざまな用途で使用されています。特徴:優れた耐熱性(260℃までの連続使用温度)、高い耐薬品性、滑らかな非粘着表面カラー:白色用途例:化学プラントのシール材、食品加工機器の部品、絶縁材料などグラスファイバーやグラファイト、ブロンズ、カーボン、炭素繊維などの充てん材を配合したグレードは、特定の物性を強化しています。これにより、より過酷な環境での使用が可能となり、幅広い産業で活躍しています。特徴:耐摩耗性や機械的強度の向上、静電気の抑制カラー:白色または充てん材の色に応じた色合い用途例:半導体製造装置の摺動部品、高負荷の機械部品、電気絶縁用部材など当社バルカーは1951年に、米国よりPTFE原料パウダーを10kg輸入。1952年にふっ素樹脂加工技術研究を終えて、PTFEを「バルフロン®」として製品化し、販売したことからはじまりました。バルフロン®の豊富なラインナップを通じて、多様なニーズに対応する製品を提供しています。以下に代表的な製品群を紹介します。バルフロン®シートバルフロン®スリーブバルフロン®ロッドバルフロン®切削テープバルフロン®両面処理テープバルフロン®片面処理テープバルフロン®粘着テープバルフロン®強化テープバルフロン®ガラスクロスバルフロン®未焼成テープバルフロン®ベンダロンチューブバルカーのバルフロン®シリーズは、PTFEの特性を最大限に活かし、多様な産業や用途に対応する幅広い製品ラインナップを展開しています。標準グレードから充填材を加えた特殊グレードまで、用途に応じた最適な製品選びをサポートします。高品質なバルフロン®製品はバルカーの技術力とともに、産業界のさまざまなニーズに応え続けています。PTFEは、先端技術や社会的ニーズの変化に応じて、用途や市場が急速に広がりを見せています。この章では、PTFEにおける最新の市場動向や今後の展開について詳しく解説します。半導体製造におけるPTFEの需要は、今後も順調な拡大が見込まれています。特に、薬液管理や耐薬品性が求められる分野で、PTFEは欠かせない存在です。5G通信やAI(人工知能)、自動運転技術などの進展により、さらなる成長が予測されています。この分野では、高純度の薬液を取り扱うため、耐薬品性と非粘着性を兼ね備えたPTFEが必須材料となります。市場レポートによると、2024年には世界半導体売上高が前年比18.8%増の6298億ドル、2025年には13.8%増の7167億ドルに達する見込みです。これに伴い、半導体製造装置や薬液配管でのPTFE使用がさらに広がると考えられます。需要の拡大により、PTFEは半導体産業を支える重要な材料として、引き続き高い需要を誇るでしょう。自動運転技術の進展により、自動車分野でのPTFEの活用が加速しています。特に、ミリ波レーダや高電圧系統での使用が注目されています。自動運転を支えるミリ波レーダは、電装ロスを極限まで抑える必要があります。そのため、絶縁性が高く、耐熱性に優れたPTFEが使用されることが一般的です。また、電気自動車(EV)では高電圧部品の絶縁材としての役割が期待されています。既存の先進運転支援システム(ADAS)や、アクティブクルーズコントロールに活用されているPTFEは、次世代自動運転車両での活躍がさらに拡大すると予測されます。今後、PTFEは自動車の進化に欠かせない素材として、モビリティの未来を支える存在です。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、PTFE製品の調達が効率化されています。従来の方法に比べて、スピーディで柔軟な調達が可能になりました。従来の調達プロセスでは、サプライヤーの選定、工場視察、サンプル作成、加工方法の相談など、多くの手間と時間が必要でした。しかしDXの導入により、これらのプロセスがオンラインで完結できるようになりました。当社バルカーが展開するデジタル調達サービスQuick Value™では、図面をアップロードするだけで迅速な見積もりを取得でき、2時間以内のレスポンスを提供。これにより、設計から調達までの時間が大幅に短縮されます。DXの進展により、PTFE製品の調達プロセスに革命をもたらし、顧客にとって大きな価値を提供しています。Quick Value™は当社バルカーが提供するPTFEやエンプラ製品の調達を効率化するデジタルサービスです。WEB上で簡単に見積り依頼から製品の発注まで完了することができ、短時間で高品質な調達を実現します。図面をアップロードするだけで、原則2時間以内にお見積りをご提示します。また、バルフロン®をはじめとするPTFE製品の豊富なラインナップに対応しており、切削加工品や特殊加工品についても幅広いオプションを提供しています。

ふっ素樹脂とは?種類・特性・用途別の選び方を徹底解説
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ふっ素樹脂とは?種類・特性・用途別の選び方を徹底解説

ふっ素樹脂に対して「テフロンとの違いは?耐熱性や耐薬品性は?どの材質が最適なのか?」などの疑問を持っていませんか?ふっ素樹脂には複数の材質があり、それぞれ特性が大きく異なります。間違った材質を選定してしまった場合、それぞれの特性を活かしきれずトラブルの原因になることがあります。本記事では、当社バルカーの高機能樹脂担当スタッフがふっ素樹脂の種類と特性をわかりやすく解説し、適切な材質の選び方や加工方法についても詳しく紹介します。バルカーが長年培ってきた知見をもとに正しい選定基準を解説しますので、ぜひ参考にしてください。ふっ素樹脂はふっ素原子を含む高機能性の合成樹脂を指し、優れた耐熱性・耐薬品性・低摩擦性を備えた材質として知られています。半導体・航空宇宙・医療・食品産業など、高い耐久性と特殊な性能が求められるさまざまな分野で幅広く活用されています。そんなふっ素樹脂の特徴として、温度による影響や腐食性の強い化学薬品の影響を受けにくいことが挙げられます。これは化学的に非常に安定している炭素(C)とフッ素(F)の強固な結合による特徴です。また、ふっ素原子が分子の表面に多く配置されているため非常に低い表面エネルギーを持つことで非粘着性や撥水性に優れるという特性もあります。この特性は、調理器具のテフロン加工や汚れにくい医療機器、電子部品などに活用されています。ちなみに、ふっ素樹脂とテフロンの違いは「一般名称」と「商標」の違いです。「テフロン™」は後述するふっ素樹脂の1材質、PTFEにおける米デュポン社(現ケマーズ社)の登録商標として広く認知されています。ふっ素樹脂にはさまざまな種類があり、それぞれ化学構造や特性が異なるため用途によって最適なものを選ぶことが重要です。ふっ素樹脂は大きく分けると、以下3つの分類に分けられます。ふっ素樹脂は「どれも同じ」と思われがちですが、実際には材質によって特性が大きく異なるので適材適所によって選定する必要があります。たとえば、耐熱性がもっとも高い材質はPTFEですが、溶融粘度が高い特性によって射出成型や押出成形ができないため、射出成形・押出成形が可能なPFA・FEPなどのふっ素樹脂で代替することがあります。また、ETFE・PVDF・PCTFEは機械的強度に優れるため、構造部品や耐摩耗性が求められる用途で選ばれます。このように、ふっ素樹脂は材質ごとに特性に違いがあるため用途に応じた選定が不可欠です。各ふっ素樹脂の詳細については、後述する次の章の各一覧表をご参照ください。ふっ素樹脂は非粘着性・表面特性(撥水・撥油)・低摩擦特性・耐薬品性・耐熱性・電気絶縁性・耐候性・難燃性など、数多くの優れた特性を持つ高機能樹脂です。その一方で、材質によって特性に違いがあるため用途ごとに最適な樹脂を選ぶことが重要です。この章では、物理的特性・機械的特性・熱的特性・電気的特性・その他の特性に項目を分けて、それぞれのメリットと材質ごとの違いについて詳しく解説します。各特性を比較しながら、用途に適したふっ素樹脂の選び方を確認していきましょう。ふっ素樹脂はその比重(密度)と融点によって物理的特性が異なり、用途ごとに適した材質を選定することが重要です。たとえば、軽量で機械的強度のバランスが良いETFEやECTFEは構造部品向きですが、耐熱性が求められる場合はPTFEやPFAが最適です。これらの物理的特性の違いは耐久性や加工性にも影響を与えるため、適切な選定が求められます。ふっ素樹脂は材質ごとに引張強さや伸び・圧縮強さ・衝撃強さなど、機械的特性にも違いがあるため使用する環境や求める性能に応じた選定が必要です。たとえば、PTFE・PFAは圧縮強さに劣る一方で、伸びが大きく柔軟性に優れているためシール材やチューブに向いています。ふっ素樹脂は熱伝導率や比熱・線膨張係数・耐熱性(最高使用温度・熱変形温度)などの熱的特性も異なり、用途ごとに長寿命化・耐久性を意識した適切な材質の選定が求められます。たとえば、耐熱性を重視するなら最高使用温度がもっとも高いPTFEやPFA、寸法安定性を求めるなら線膨張係数が比較的安定しているPCTFEが適しています。ふっ素樹脂は体積抵抗率や絶縁破壊の強さ・誘電率・誘電正接・耐アーク性などの電気的特性にも各材質ごとに違いがあり、電気絶縁性能や高周波特性などを意識して最適な材質を選ぶことが重要です。たとえば、高い電気絶縁性能を求めるなら体積抵抗率が高いPTFEやPFA、高周波特性を重視するならPTFEが適しています。ふっ素樹脂は吸水率や難燃性・耐候性・耐薬品性など、その他特性においても優れた性能を発揮します。たとえば吸水率を比較すると、湿度が影響する精密部品や電子機器にはPCTFEが適しています。また、すべての材質がV-0相当の難燃性の特性があります。耐薬品性に関しては、PTFE・PFA・FEPが化学薬品全般に対する耐性が極めて高く産業用途に有効です。ふっ素樹脂は優れた耐熱性や耐薬品性・低摩擦性などの特性を持つ高機能樹脂ですが、一方で以下7つのデメリットも存在します。用途によっては適切な設計や加工方法を検討する必要があります。ふっ素樹脂は高温環境での耐久性に優れる一方で、機械的強度が低いため変形しやすいという課題があります。特にPTFEは引張強度が低く、高負荷のかかる部品には向きません。ふっ素樹脂の機械的強度を補う方法として、ガラス繊維・カーボン・ブロンズなどの充てん材を添加することで強度を向上させる対策が有効です。ふっ素樹脂は低摩擦特性が強みですが、その反面、長時間の摺動(摩擦)による摩耗が起こりやすいという欠点があります。そのため、摺動部品では充てん剤を添加して耐摩耗の対策が必要です。ふっ素樹脂を摩耗しにくくする方法として、PCTFEやPVDFなどの摩耗耐性が高い材質を選定することも有効な手段といえるでしょう。また、摺動部品ではガラス繊維などの強化材を充填することも対策の一つに挙げられます。ふっ素樹脂は表面エネルギーが極めて低いため、接着剤での固定が難しく、密着性が低いことも注意しておきましょう。ふっ素樹脂に接着を必要とする場合は、対策としてプラズマ処理を行ったり、特殊プライマーを使用する必要があります。PTFEなど一部のふっ素樹脂は、一般的な射出成形が難しいため特殊な加工技術が必要です。成形性を改善する手段として、PFAやFEPなどの比較的成形性が良い樹脂を選定することが有効です。ただし、これらのふっ素樹脂は加工コストが高くなるため、用途や予算に応じた選定が重要です。ふっ素樹脂は製造プロセスが複雑かつ原料コストが高いため、他のエンジニアリングプラスチックと比べても価格が高い傾向にあります。特にPTFEやPFAは高価な部類に入り、大量生産用途ではコスト面の考慮が必要です。ふっ素樹脂のコストを抑える方法として、用途ごとに最適な材質を選定し、不必要な高グレードの樹脂を避けることでコスト削減が可能です。また、代替可能なエンジニアリングプラスチックを検討することも一つの手段といえます。ふっ素樹脂を高温(約260℃以上)で加工すると、分解して有毒なガス(ふっ素ガス)が発生する可能性があります。特にPTFEやPFAを加熱するとガスが発生しやすいため、適切な換気設備のある環境での加工が必要です。工場や作業現場では排気装置や防毒マスクの使用を推奨します。ふっ素樹脂は耐薬品性・耐熱性が極めて高い反面、リサイクルが難しく、廃棄の際に特殊な処理が必要になるという課題があります。そのため、環境負荷を考慮した設計が求められています。ふっ素樹脂のリサイクル対策として、廃棄時には専門業者のリサイクルシステムを活用し、適切に処理することを意識しておきましょう。ふっ素樹脂は優れた耐熱性・耐薬品性・低摩擦性・電気絶縁性などの特性を活かし、幅広い産業で利用されています。特に、半導体・電子機器産業や医療・製薬産業、化学・プラント産業、航空宇宙・自動車産業、食品産業など、現代において高い品質・安全性が求められる各分野で必要不可欠な素材です。前述の章でも解説した通り、材質ごとに特性が異なるため用途に適した選定が重要です。たとえば、PTFEは半導体・化学プラント・航空宇宙分野でもっとも多く使われるふっ素樹脂です。特に、耐薬品性と電気絶縁性を活かしてケーブル絶縁材や化学タンクのライニングなどに活用されています。また、低摩擦特性を活かして摺動部品やシール材にも使われています。PFA・FEPはPTFEと同様の耐薬品性を持ちながらも成形性に優れており、また透明性も高いため、半導体製造装置の配管や医療用チューブ、フィルターなどに使用されています。特に、高純度が求められる環境での使用に適しているため、クリーンルーム内での流体輸送や薬液供給装置には不可欠な材質です。ETFE・PCTFEは耐候性・機械的強度・耐衝撃性に優れているため、航空宇宙・自動車産業で活用されています。特に、ETFEは軽量でありながら強度が高いため燃料ホースや電線被覆に使用され、PCTFEは低温環境でも寸法安定性が高いため宇宙開発や特殊ガスバリア用途に適しています。ふっ素樹脂は材質ごとに適した成形方法が異なるため、用途に応じた加工技術の選定が重要です。PTFEは溶融加工ができないため、モールディングパウダー・ファインパウダー・ディスパージョンなどを用いた特殊な成形法が必要です。一方で、PFAに代表される溶融粘度を改善したふっ素樹脂は、押出成形・射出成形などの一般的な成形方法が適用されます。この章では、各成形法の特徴を詳しく解説します。モールディングパウダーはPTFEの粉末を加圧して成形する技術の総称です。この成形法では熱を加えずに圧縮し、焼結によって固めるプロセスが採用されます。主に、圧縮成型法とラム押出成形法の2種類があります。圧縮成形法はPTFEの粉末を型に入れ、圧力をかけて成形する方法です。ホットプレス成形では、圧力を加えながら加熱することで、より密度の高い成形品を作ることができます。この成形方法はブロック材やシート材・大型のシール材などの成形に適しており、均一な品質が求められる用途で使用されます。ラム押出成形法はPTFEの粉末を高圧で押し出し、連続的にチューブやロッド状の製品を成形する方法です。この成形方法は継ぎ目のない長尺の製品を作るのに適しており、耐薬品ホースや電気絶縁材などの用途に利用されます。ファインパウダーはPTFEをより細かい粒子に凝集した白色粉末を指し、ペースト押出成形法やカレンダリング(圧延)成形法の原料として用いられます。剪断力を加えると繊維化する性質があり、チューブやパイプ・生テープ・電線被覆などのさまざまな長さの繊維の製造・成形ができます。ペースト押出成形法はファインパウダーに潤滑剤を混ぜて予備成形物を作り、押出し後に潤滑剤を乾燥・焼成して成形する方法です。この成形方法は極細チューブやワイヤー被覆などの製造に用いられ、特に電気絶縁材や医療チューブに活用されています。カレンダリング成形法は圧延機を用いて、ファインパウダーを薄膜に加工する技術です。この成形方法は連続的なシート状の成形が可能で、フィルムや耐薬品ライニングシートなどに使用されます。ディスパージョンはPTFEを分散液(ディスパージョン液)として利用し、表面に薄膜を形成する技術です。主に含浸コーティング法が用いられます。その含浸コーティング法はPTFEの分散液を基材(ガラスクロスや金属部品など)に浸透させ、表面に薄膜を形成する成形方法です。この成形方法は耐薬品コーティングや非粘着シートなどの製造に適しています。押出成形法は熱可塑性ふっ素樹脂を加熱・溶融し、口金を通して連続的に押し出して成形する方法です。この成形方法はチューブやシート・フィルムなどの製造に利用されています。適用材質はPFA・FEP・ETFE・PVDF・ECTFE・PCTFEと幅広く、PTFEには適用されません。射出成形法は溶融したふっ素樹脂を金型に流し込み、急冷して成形する方法です。この成形方法は複雑な形状の部品を大量生産するのに適しており、バルブ部品や電子機器のパーツなどに利用されます。トランスファー成形法は溶融した樹脂を加圧しながら金型内に流し込み、均一に成形する方法です。この成形方法は射出成形法と異なり、内部の空隙を減らすことができるため、高精度が求められる機械部品やシール材に適しています。回転成形法は粉末状の樹脂を金型内で回転させながら加熱し、均一な肉厚の成形品を作る方法です。この成形方法は大型タンクや耐薬品ライニング材などに利用されています。ブロー成形法は樹脂を加熱し、型の中に空気を吹き込んで膨らませることで中空成形品を作る方法です。特に、インジェクションブロー成形は射出成形とブロー成形を組み合わせた技術で、小型ボトルやタンクの製造に適しています。ふっ素樹脂の成形品は使用環境や用途に応じて後加工(仕上げ加工)を施すことで、より精密な形状や機能性を実現できます。PTFEでも切削や接合技術を活用することで、より高度な部品加工が可能です。切削加工は成形済みのふっ素樹脂(シート・棒材など)を旋盤やマシニングセンタ・複合加工機などの工作機械で削り、目的の形状に仕上げる加工方法です。ふっ素樹脂は射出成形や押出成形で製造されることが大半ですが、金型成形とは異なり微細な調整が可能なため、高精度な部品(バルブシート・ガスケット・シール材など)や少量生産・試作品では、金型不要でカスタムしやすい切削加工が必要になるケースが多いです。そのため、切削加工によってPTFEも射出成形や押出成形同様、複雑な形状に対応することができます。バルカーでは表面切削や溝部切削・テーパー加工・ポケット加工・穴加工・裏面ポケット加工・裏面切削・端面加工・外径加工・内径加工・マシニング加工に対応しています。研磨加工は樹脂の表面を磨くことで粗さを低減し、平滑性を向上させる加工技術です。低摩擦特性をさらに向上させるために、摺動部品やシール材に使われるPTFE・PFAの表面仕上げとして使用されます。ふっ素樹脂は耐薬品性が高いため一般的には溶接が困難ですが、一部のメーカーで溶接が可能です。PFAチューブとPTFEブロックを溶接するなどして、配管部品を作る際に利用される技術で、化学プラントや半導体産業での利用が多いです。ふっ素樹脂は表面エネルギーが低いため通常の接着剤では密着しにくいのですが、シール材・電気絶縁用途としてプラズマ処理やエッチング処理を施すことで、金具や他素材との接着が可能になります。こちらの処理は特にPTFEやPFAの加工時に用いられる手法です。ふっ素樹脂は優れた耐熱性・耐薬品性・低摩擦特性を持ち、多くの産業で活用される高機能樹脂です。バルカーではPTFE(バルフロン®)だけでなくPFA・PCTFE・PVDFの4材質を取り扱っており、用途に応じた最適な材質の提供が可能です。特に、当社バルカーが製造・販売するPTFE製品「バルフロン®」は従来のPTFEよりも耐クリープ性や耐屈曲疲労性に優れた独自開発品であり、ガスケット・シール材・バルブシートなどの耐久性が求められる用途で高い性能を発揮します。より詳細な商品ラインナップをご希望の方はバルカー製品情報をご確認ください。ふっ素樹脂はさまざまな優れた特性を備えているため多くの産業で利用されていますが、選定を誤るとコストが増大してしまい用途に適さない可能性があります。この章では、ふっ素樹脂を選ぶ際の注意点とコストに関するポイントを解説し、最適な材料選びのための基準を紹介します。ふっ素樹脂は材質ごとに特性が異なるため、以下のポイントを考慮して適切な材料を選定することが重要です。耐熱性・耐薬品性による違いを理解使用環境(温度・圧力・摩耗)に応じた選定成形方法の違いによるコスト変動上記項目の詳細については前述の各章をご参照ください。ふっ素樹脂は他のエンジニアリングプラスチックと比べても価格が高い傾向にあります。しかし、適切な選定や加工方法の工夫によってコストを最適化することが可能です。ふっ素樹脂のコストを抑える方法として、用途に適したグレードを選定し、不要な高性能材を避けることがコスト削減につながります。たとえば、半導体・医療用途でなければ高純度グレードのPFAを選定する必要はありません。また、耐薬品性が求められない用途であれば、PTFEの代わりにPVDFやPCTFEを使用することでコストダウンが可能です。成形方法を適切に選ぶことで、ふっ素樹脂の加工コストを最適化することができます。たとえば、大量生産には射出成形が可能な熱可塑性ふっ素樹脂(PFA・PVDFなど)を選択することがコスト削減に最適です。また、少量&高精度加工であれば切削加工を活用することで金型費用を抑えたり、複雑形状ならトランスファー成形や回転成形を活用することで無駄な材料を削減することにつながります。後加工(仕上げ加工)の選択肢を考慮して、材料費と工数を削減することもコストダウンの鍵です。たとえば、PTFEはブロック材を購入して切削加工するより、成形時に近い形状にすることで無駄な材料コストを削減することができます。また接着が不要な場合、ネジ切りや機械的な固定方法を活用することで追加の加工費を削減できます。Quick Value™は当社バルカーが提供する、樹脂加工品を即時に見積もりして発注までデジタル調達サービスです。図面をアップロードするだけで最短2時間以内に即時で見積もりを提示。PTFE(バルフロン®)をはじめ、PFA・PCTFE・PVDFなどのふっ素樹脂にも切削加工から複雑な形状の加工まで柔軟に対応しています。Quick Value™は加工業者探しや見積もり待ち、納期調整の手間を削減し、設計者や調達担当者がより効率的に業務を進められる環境を提供します。図面をアップロードするだけで即時に見積もりと納期を調べることができるので、まずは一度試してみてください。

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